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硬麻・脊麻による感染性合併症の予防・診断・管理~予防② [anesthesiology]

Practice Advisory for the Prevention, Diagnosis, and Management of Infectious Complications Associated with Neuraxial Techniques: A Report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Infectious Complications Associated with Neuraxial Techniques

Anesthesiology 2010年3月号より

(5) 消毒液の選択
一回使用分が一つ一つパッケージ化された消毒液を使用すると、一つのボトルに入った消毒液を複数の患者に分割して使用した場合よりも感染性合併症が減るかどうかを判断する材料となる文献は不足している(カテゴリーD)。観測研究一編で、一つのボトルに入った消毒液を複数の患者に分割して使用する場合、未開封のボトルを開けて消毒液(ポピドンヨード)を使用したときには細菌汚染は起こらないが、すでに開封されたボトルの消毒液を使用すると細菌汚染が起こることが明らかにされている(カテゴリーB1)。さらに、一つのボトルからすでに複数回使用されたポピドンヨードを使って皮膚消毒が行われた患者で、腰部脊椎椎間板炎が発生したという一例報告がある(カテゴリーB3)。

作業部会顧問は、硬膜外麻酔または脊髄クモ膜下麻酔実施時の皮膚消毒にはクロルヘキシジンアルコールの使用が望ましいとしている。一方、ASA会員においては、クロルヘキシジン、クロルヘキシジンアルコール、ポピドンヨード、ポピドンヨードアルコールのいずれか特定の消毒液に対する選好傾向は認められなかった。

(6) カテーテル挿入部位の無菌密閉ドレッシング材貼付
カテーテル挿入部位に無菌密閉ドレッシングを貼付することによって感染性合併症が減るか否かを検証する比較試験は見当たらなかった(カテゴリーD)。観測研究一編で、カテーテル先端の培養陽性率は30%以上にのぼることが報告されている(カテゴリーB2)。密閉ドレッシング材を貼付しても皮膚または硬膜外膿瘍が発生したという症例報告が4編発表されている(カテゴリーB3)。

カテーテル挿入部位に無菌密閉ドレッシング材を貼付することを、作業部会顧問およびASA会員の両者ともが強く支持している。

(7)硬膜外持続注入時の細菌フィルタの使用
細菌フィルタを使用することによって感染性合併症が減るか否かを検証する比較試験は見当たらなかった(カテゴリーD)。無作為化割り当てを行っていない比較試験一編で、硬膜外持続注入中に細菌フィルタを用いてもフィルタ下流の培養陽性率は低下しないという結果が得られている(カテゴリーC2)。観測研究三編で、精密濾過フィルタを用いても感染や硬膜外膿瘍が発生しうることが報告されている(カテゴリーB2)。

硬膜外持続注入時の細菌フィルタ使用については、ASA会員は肯定、作業部会顧問はどちらとも言えないという見解を示している。

(8) 硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔用薬剤投与ラインの接続外しおよび再接続回数の制限
硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔用薬剤投与ラインの接続外しおよび再接続回数を制限することによって感染性合併症発生率を減らせるか否かを判断する材料となる文献は不足している(カテゴリーD)。

作業部会顧問およびASA会員の両者ともが、感染性合併症のリスクを低減するため、硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔用薬剤投与ラインの接続外しおよび再接続回数を制限することを強く支持している。

(9) カテーテル接続部位が偶発的に外れてしまった場合の管理
カテーテル接続部位が偶発的に外れてしまった場合に、そのカテーテルを抜去すると感染性合併症の発生率が低下するかどうかを判断する材料となる文献は不足している(カテゴリーD)。

カテーテル接続部位が偶発的に外れたときに、ただちにカテーテルを抜去することについては、ASA会員は賛否両論、作業部会顧問は否定的見解を示している。しかし、本作業部会は、カテーテル接続が偶発的に外れた現場を目撃した者がいない場合には、感染リスクを避けるためカテーテルを抜去すべきであると考える。

(10) カテーテル留置期間の短縮
カテーテル留置期間が長いほど感染性合併症発生率が高いかどうかを検証する比較試験は見当たらなかった(カテゴリーD)。観測研究では、感染及び硬膜外膿瘍は留置期間が長いほど起こりやすいという結果が得られている(カテゴリーB2)。症例報告でも同様の知見が認められている(カテゴリーB3)。しかし、感染性合併症の増加と関わる留置期間の閾値を明らかにした文献は見当たらなかった(カテゴリーD)。

作業部会顧問およびASA会員の両者ともが、臨床的に必要な期間を超えてカテーテルを留置しつづけてはならないという説を強く支持している。

硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔による感染予防についての勧告

硬膜外麻酔または脊髄クモ膜下麻酔の実施に先立ち、感染性合併症リスクの有無を見極めるため、病歴や理学的所見の確認と検査結果の評価を行うべきである(注;ルーチーン検査は必要ないかもしれない)。感染リスクが高い患者では、硬膜外麻酔または脊髄クモ膜下麻酔以外の手段を考慮する。菌血症が確定しているか疑われる患者に対して硬膜外麻酔または脊髄クモ膜下麻酔を実施する際には、抗菌薬を穿刺前に予防投与することを考慮する。硬膜外膿瘍がある患者では、脊髄クモ膜下麻酔を避けるべきである。

器具(例;超音波検査機器)の準備および穿刺やカテーテル留置に際しては無菌操作を徹底すべきである。具体的には、(1) 装身具(指輪や時計など)を外す、手洗い、帽子をかぶる、マスクを装着する(口と鼻の両方を覆う。症例ごとに新しいものに取り替える方がよいかもしれない。)、無菌手袋を使う。(2) 皮膚消毒には一回使用分ごとに個別パッケージされた消毒液を用いる。(3) 皮膚消毒にはクロルヘキシジン(クロルヘキシジンアルコールが望ましい)を用い、十分乾かす。(注;クロルヘキシジンがない場合、ポピドンヨードよりポピドンヨードアルコールが望ましい。)(4) 無菌ドレープを用いる。(5) カテーテル挿入部位には無菌密閉ドレッシング材を貼付する。

長期にわたって硬膜外持続注入を実施する場合には細菌フィルタの使用を考慮する。感染性合併症のリスクを最小限に抑えるため、硬膜外麻酔・脊髄クモ膜下麻酔用薬剤投与ラインの接続外しおよび再接続回数を制限する。カテーテル接続が偶発的に外れた場合、現場を目撃した者がいなければ、カテーテル抜去を考慮する。臨床的に必要な期間を超えてカテーテルを留置しつづけてはならない。

教訓 マスクはつけっぱなしではなく患者ごとにかえた方がいいみたいです。消毒液は一回使い切りタイプがおすすめです(例;ポビ綿球)。
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