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CDトキシンのモノクローナル抗体~結果 [critical care]

Treatment with Monoclonal Antibodies against Clostridium difficile Toxins

NEJM 2010年1月21日号より

結果

患者
登録可否の評価対象となった患者7396名のうち484名を審査し、30施設から200名の患者が登録された。平均年齢は64歳(0歳~101歳)であった。無作為割り当ての結果、101名にCDA1-CDB1抗体が投与され、99名にプラセボが投与された(Fig. 1 in Supplementary Appendix)。基準時点における患者背景については、プラセボ群よりもモノクローナル抗体群の方が、登録審査時点および割り当て薬投与時点での軟便・水様便回数が多かったが、それ以外の項目では両群同等であった(Table 1)。割り当て薬投与から研究第84日までのあいだに、メトロニダゾールまたはバンコマイシン以外の抗菌薬が投与された患者数はモノクローナル抗体群では40名(40%)、プラセボ群では48名(48%)であった(P=0.26)。

有効性
有効性に関する主要評価項目は、クロストリジウム・ディフィシル再感染が検査で確認された診断確定例である。32例の再感染例が認められ、発生率はモノクローナル抗体群が7%、プラセボ群が25%であった(95%CI, 7-29; P<0.001)。再感染の診断基準をもっと広く緩やかなものとした場合でも、ITT解析、研究プロトコルに従った患者のみを対象とした解析(per protocol解析)のいずれにおいても、モノクローナル抗体使用による再感染発生率の有意な低下が認められた。下痢再発例のうち、検査でクロストリジウム・ディフィシル再感染が確認された症例と検査では確認されなかった症例およびクロストリジウム・ディフィシルに対する抗菌薬が使用された症例と使用されなかった症例を両群で比較したところ、下痢再発の発生率は、モノクローナル抗体群では28%、プラセボ群では50%であった(P=0.002)(see the Methods section and Table 1 in the Supplementary Appendix)。

クロストリジウム・ディフィシル感染再発までの時間をKaplan-Meier曲線を用いて解析したところ、二群間に有意差が認められた(P<0.001)(Fig. 1)。全追跡期間における感染再発の相対危険度は、モノクローナル抗体群の方が有意に低かった(RR 0.23; 95%CI, 0.08-0.51; P=0.01)。

初回感染時のCDA1-CDB1による下痢軽減効果を副次評価項目とした。少なくとも2日以上連続して一日5回以上の軟便・水様便が認められる場合を重症下痢とした。クロストリジウム・ディフィシル初回感染時の下痢重症度については、モノクローナル抗体群とプラセボ群とで差を認めなかった。また、初回感染の治癒までに要した日数の平均値と中央値および治療失敗例の割合についても二群間に差はなかった。

サブグループ解析
予め設定したサブグループについて解析を行ったところ、バンコマイシンまたはメトロニダゾール投与群、現在流行中のBI/NAP1/027株または稀な株のクロストリジウム・ディフィシル株が検出された群、以前にも複数回のクロストリジウム・ディフィシル感染の前歴がある患者群では、CDA1-CDB1が有効であることが明らかになった(Table 2)。モノクローナル抗体群における再発例はすべて、入院中に発生した。入院の有無別のサブグループ解析は事後的に行った。入院患者は外来患者と比べ、年齢もHorn’s index(基礎疾患の重症度をあらわす指標。点数が高いほど重症。) も有意に高かった。また、入院患者の方が登録時のクロストリジウム・ディフィシル感染がより重症である傾向が認められた(Table 2 in the Supplementary Appendix)。事後解析では、モノクローナル抗体群の再発患者7名中2名(29%)、プラセボ群の再発患者においては25名中16名(64%)が重度の下痢を呈した(P=0.20)。

初回感染治癒後の入院
クロストリジウム・ディフィシル初回感染による平均入院期間については、モノクローナル抗体群とプラセボ群のあいだに有意差は認められなかった(それぞれ9.5日、9.4日)。また、84日間の全追跡期間における全入院日数についても有意差は認められなかった。だが事後解析では、割り当て薬投与後に入院した患者の割合には有意差があることが明らかになった:モノクローナル抗体群9%、プラセボ群20% (P=0.03)。入院時病名についての探索的因子解析を行ったところ、クロストリジウム・ディフィシル感染に関連する病名(下痢、脱水、低血圧など)が多く、モノクローナル抗体群の入院例9例のうち5例、プラセボ群の入院例20例のうち16例がこれに該当した。ただし、入院時には感染再発の基準とは合致しない場合もあった。

薬力学
抗トキシンAおよび抗トキシンBの血中濃度を、割り当て薬投与前後に全患者で測定した(Fig. 2)。モノクローナル抗体群では、排泄相半減期の平均値は抗トキシンAでは26±8.4日、抗トキシンBでは22±13日であった。プラセボ群の抗トキシン抗体血中濃度は、トキシン曝露により内因性に生成された抗体の量をあらわす。プラセボ群のうち感染が再発した患者の大半では、いずれの抗トキシン抗体の血中濃度も低いか検出不能レベルであった。

有害事象
割り当て薬の投与中および投与終了から2時間後までのバイタルサインは両群同等であった。投与中に14名(モノクローナル抗体群9名、プラセボ群5名)、投与終了から2時間後までに11名(モノクローナル抗体群6名、プラセボ群5名)に有害事象が発生した。いずれの有害事象もその程度は軽度から中等度であった。最も頻度が高かったのは両群とも頭痛であった。モノクローナル抗体群で7名、プラセボ群で8名が研究期間中に死亡した(P=0.79)。割り当て試験薬が死亡の原因であった症例は皆無であった(see the Results section in the Supplementary Appendix)。モノクローナル抗体群18名とプラセボ群28名から、重度の有害事象が発生したとの報告があった(P=0.09)。

グレード3または4の有害事象のうち頻度の高かったものについては、その発生率は両群同等であった。ただし、低血圧だけは例外であり、モノクローナル抗体群の方が発生率は低かった(Table 3)。全研究期間を通じての有害事象の解析を行ったところ、軽微な有害事象の一部(食欲不振、不安感、下痢、抑鬱および不眠)は、モノクローナル抗体群の方がプラセボ群より発生率が低いことが明らかになった(Table 3 in the Supplementary Appendix)。

モノクローナル抗体の免疫原性を評価するに当たり、CDA1およびCDB1投与によって生ずるヒト抗ヒト抗体の力価を、割り当て薬投与前と投与後複数時点に測定した。モノクローナル抗体群の2名は、投与前にヒト抗ヒト抗体が陽性であった。このうち1名では、モノクローナル抗体投与後にはヒト抗ヒト抗体を検出できなくなっていた。もう1名では、モノクローナル抗体投与後もヒト抗ヒト抗体力価が投与前と変わらなかった。割り当て薬投与6ヶ月後(最終評価日168±14日後)まで追跡調査を実施した20名(モノクローナル抗体群8名、偽薬群12名)では、ヒト抗ヒト抗体は検出されなかった。

関連記事:クロストリジウム・ディフィシル~再発例の治療

教訓 有効性に関する主要評価項目は、クロストリジウム・ディフィシル再感染診断確定例の発生率としました。32例の再感染例が認められ、発生率はモノクローナル抗体群が7%、プラセボ群が25%でした(95%CI, 7-29; P<0.001)。モノクローナル抗体を用いるとCD再感染を防ぐ効果があることが明らかになりました。
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