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ALIにおける理学的所見とPACデータの関連~結果 [critical care]

Association of physical examination with pulmonary artery catheter parameters in acute lung injury

Critical Care Medicine 2009年10月号より

結果

プロトコルに準じた初回の介入が行われるまでの平均時間は、ICU入室から43時間後およびALI診断基準を満たしてから24時間後であった。PAC群に割り当てられた513名においては、CIおよびSvO2が低い症例は少なかった。データが全て揃った患者の中では、基準時点のCIが2.5を下回ったのはわずか8.1%(408名中33名)、基準時点のSvO2が60%を下回ったのは15.5%(394名中61名)であった。CI<2.5かつSvO2<60%であったのは3.7%(350名中13名)であった。

目的1(基準時点において循環動態不良を示す理学的所見がある場合に、CI<2.5またはSvO2<60%であることを予測できるかどうかを明らかにする)の結果

405名において理学的所見と低CIの相関の検討が行われた。三つすべての理学的所見が揃った患者は10名であった(CI 2.5未満4名、CI 2.5以上6名)。理学的所見のうち一つまたは二つに該当した患者は90名であった(CI 2.5未満13名、CI 2.5以上77名)。一つも所見が認められなかった患者は305名であった(CI 2.5未満16名、CI 2.5以上289名)。392名について、基準時点における理学的所見と低SvO2の相関の検討が行われた。三つすべての理学的所見が揃った患者は9名であった(SvO2 60%未満5名、SvO2 60%以上4名)。理学的所見のうち一つまたは二つに該当した患者は91名であった(SvO2 60%未満19名、SvO2 60%以上72名)。一つも所見が認められなかった患者は292名であった(SvO2 60%未満36名、SvO2 60%以上256名)。Table 1~4に、理学的所見が全て揃ったときと、三つのうちいずれか一つが認められたときの、CI 2.5未満およびSvO2 60%未満との相関を示した。

さらに、以上の症例のうち、昇圧薬を投与された患者(138名)の基準時点における理学的所見とCI 2.5未満およびSvO2 60%未満との相関を検討した。この患者群では、三つ全ての理学的所見が揃うこととCI 2.5未満であることの相関については、感度19%、特異度97%、陽性的中率43%、陰性的中率90%であった。三つ全ての理学的所見が揃うこととSvO2 60%未満であることの相関については、感度17%、特異度98%、陽性的中率71%、陰性的中率81%であった。

目的2(理学的所見と客観的パラメータ[24時間水分喪失量および中心静脈圧]からCI<2.5またはSvO2<60%を予測できるかどうか)の結果

研究開始日から第7日まで連日測定したCIの8%が2.5未満であった。データが完全にそろった患者478名について、研究開始日から第7日の各日に収集したデータを検討した。一般化推定方程式モデルを用いた解析では、四肢冷感があることとCI 2.5未満との相関については、オッズ比1.9、95%信頼区間1.0-3.5 (p=0.10)という結果が得られた。中心静脈圧が高いこととCI 2.5未満との相関については、中心静脈圧1cmH2O上昇につきオッズ比1.06、95%信頼区間1.03-1.09 (p=0.002)であった。24時間総水分喪失量とCI 2.5未満との相関については、1000mLごとオッズ比0.8 (p=0.01)であった。研究開始日から第7日まで測定したSvO2の14%が60%未満であった。開始日から第7日のSvO2データが全て記録された217名について検討を行った。一般化推定方程式モデルを用いた解析では、膝のまだら模様とSvO2 60%未満のあいだには有意な相関が認められた(オッズ比5.0、95%信頼区間1.8-14.4, p=0.009)。中心静脈圧が高いこととSvO2 60%未満のあいだにも有意な相関が認められた(中心静脈圧1cmH2O上昇につきオッズ比 1.09、95%信頼区間1.04-1.14, p=0.0004)。ただし、この解析は、13名の患者におけるわずか16回の膝まだら模様所見について行われたものである。三つの理学的所見につきROCを描いたが、いずれについても、臨床的に有用性があると結論づけるに足る統計学的に有意な結果は得られなかったため掲載は見送った。

目的3(ScvO2とSvO2の相関の有無を明らかにする)の結果

ScvO2とSvO2が同時に測定されたすべてのALI患者(218名)および、ScvO2とSvO2が同時に測定されたすべての重症敗血症合併ALI患者(107名)で、両者は有意な相関を示した(Fig. 1および2)。CIとSvO2の相関をFig. 3に示した。

基準時点における、平均ScvO2は71.5±11.2%、平均SvO2は69.3±9.9%であった。ScvO2 70%未満からSvO2 60%未満を予測する精度を、基準時点のScvO2とSvO2を基に解析した結果をTable 5に示した(n=218)。基準時点で重症敗血症を呈した患者(107名)についても、ScvO2 70%未満によるSvO2 60%未満の予測精度は同様であった(感度95%、特異度71%、陽性的中率43%、陰性的中率98%)

SvO2が60%未満であると、死亡率が有意に高く、人工呼吸器非使用日数が有意に少なかった。基準時点におけるSvO2が60%未満であった患者(62名)では、研究開始60日後生存率が62% (95%信頼区間 62%-74%)であったが、60%以上であった患者(326名)では、60日後生存率は76%(95%信頼区間 71%-81%)であった。60日後生存率の絶対差は14%であった(95%信頼区間 2%-26%)(p=0.03)。基準時点のSvO2が60%未満であった患者(62名)における人工呼吸器非使用日数の中央値は6日であり、SvO2 60%以上の患者(326名)における人工呼吸器非使用日数の中央値は17日であった(p=0.004, Wilcoxon検定)。

教訓 理学的所見が三つすべて揃うことからCI<2.5を予測する場合の精度は、感度12%、特異度98%、陽性的中率40%、陰性的中率93%です。三つ揃うことからSvO2<60%を予測する場合の精度は、感度8%、特異度99%、陽性的中率56%、陰性的中率86%です。
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