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ALIにおける理学的所見とPACデータの関連~方法 [critical care]

Association of physical examination with pulmonary artery catheter parameters in acute lung injury

Critical Care Medicine 2009年10月号より

方法

FACCT多施設研究のプロトコルの詳細についてはすでに別途報告した。したがって、ここでは本研究に関連する事項についてのみ掲載する。患者選択基準は、気管挿管され陽圧換気が行われており、PaO2/FIO2<300(海抜1000メートル以上の場合は補正する)であり左房圧上昇によるものではない両側浸潤影が胸部写真で認められること、とした。主な除外基準は、ALI発症後のPAC留置;ALI発症から48時間以上経過;同意取得不能;生命予後に独立して影響を与えるか、人工呼吸器離脱を阻むか、プロトコルに従った手順を踏むのが困難であるか、のいずれかの可能性のある慢性疾患;6ヶ月以内に死亡する可能性が50%を超えると予測される不可逆的な状態とした。

FACTT対象患者のうちPAC群に無作為割り当てされた513名が、今回の遡及的研究の対象標本となった。PACは無作為割り当て後4時間以内に挿入された。挿入後2時間以内に、FACTT試験で定められた血行動態管理を開始し、7日間もしくは補助なしで呼吸が可能になった時点から12時間後まで継続した。循環動態の評価に用いられた理学的所見は、毛細血管再充満時間>2秒、膝の皮膚のまだら模様および四肢冷感である。FACTT研究のCVC群では、以上の三つの理学的所見が認められる場合には、「循環動態不良」と判断し、プロトコルに従い治療の方向性を変更した。PAC群では、心係数>2.5であれば循環動態不良と判断し、治療の方向性を変更した。PAC群の理学的所見データは、4時間おきのCI測定と同時点に収集した。ただし、PAC群では理学的所見による治療方向性の変更は行わなかった。以上のデータを用い、CIおよびSvO2と理学的所見を比較した。FACTT研究のプロトコルと同様に、CIの閾値は2.5未満とした。FACTT研究における基準時点の平均CIは4.2±1.4L/min/m2(n=408)であった。多数の重症患者を対象とした研究2編で報告されているSvO2平均値をおよそ1SD下回るのが60%であるため、本研究では低SvO2の閾値を60%未満とした。FACTT研究における基準時点の平均SvO2は69±12%(n=323)。

目的1(基準時点において循環動態不良を示す理学的所見がある場合に、CI<2.5またはSvO2<60%であることを予測できるかどうかを明らかにする)の方法

PAC挿入後、FACTT輸液プロトコル開始までに収集した基準時点の理学的所見データを解析した。収集したデータは、毛細血管充満時間が2秒を超えるかどうか、膝のまだら模様の有無そして四肢冷感の有無である。CI>2.5かつSvO2 <60%の予測に関し、2×2分割表を用いて感度、特異度、陽性的中率および陰性的中率を算出した。三つの理学的所見がすべて揃った場合(毛細血管充満時間が2秒を超え、膝にまだら模様が認められられ、四肢に冷感がある)の予測精度を求めるとともに、いずれか一つだけが認められる場合の予測精度も三つそれぞれについて算出した。

目的2(理学的所見と客観的パラメータ[24時間水分喪失量および中心静脈圧]からCI<2.5またはSvO2<60%を予測できるかどうか)の方法

基準時点およびFACTT研究開始日から第7日までの各日にデータを収集した。理学的所見については、所見の有無を毎日記録した。24時間の総水分喪失量(尿量、胃管排液量、排便量、ドレーンまたはチューブ排液量の合計)と、午前8時に最も近い時点で測定された中心静脈圧を連日記録した。

目的3(ScvO2とSvO2の相関の有無を明らかにする)の方法

ScvO2とSvO2の相関を解析するため、基準時点におけるScvO2データを収集し、同時期のSvO2と比較した。2×2分割表を用い、ScvO2が70%を下回るときに、SvO2が60%を切るかどうかを評価した。

教訓 NHI/NHLBI ARDSネットワークが実施したFluid and Catheter Treatment Trial(FACTT)のデータを利用しました。FACTTは、制限輸液vs 大量輸液、CVC vs PACの比較を目的とした2×2デザインの無作為化臨床試験で、1001名の患者が対象となりましたが、この研究ではそのうちPAC群に割り当てられた513名が対象となりました。
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