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一回換気量<6mL/kg+ECMOで肺保護~結果 [critical care]

Tidal Volume Lower than 6 ml/kg Enhances Lung Protection: Role of Extracorporeal Carbon Dioxide Removal

Anesthesiology 2009年10月号より

結果

基準を満たした患者32名のうち、22名は25< PPLAT <28cmH2Oであり、10名が28≦PPLAT≦30cmH2Oであった。患者特性をtable 1に示した。年齢、性別、SAPSⅡ、ARDSの原因疾患については、両群間に差を認めなかったが、P/F比は28≦PPLAT≦30cmH2O群の方が25<PPLAT <28cmH2O群より低かった(P<0.01)。

25< PPLAT <28cmH2O群と比べ、28≦PPLAT≦30cmH2O群の方が、肺重量が大きく、CT上の過膨張・無含気・低含気各部位が大きく、正常含気部位が小さかった(すべてP<0.001)(table 2)。28≦PPLAT≦30cmH2O群の方が25< PPLAT <28cmH2O群より、周期的膨張が起こらない部分が小さく、周期的過膨張が起こる部位が大きかった(なんらかの周期的膨張が起こる部位の合計量に占める割合19±6% vs 81±6%、67±5% vs 11±4% ;P<0.01)。低含気部位において周期的過膨張が発生する容量については、両群間で差を認めなかった。

28≦PPLAT≦30cmH2Oの患者では、一回換気量が6.3±0.2mL/kg PBWから4.2±0.3mL/kg PBWへと下げられた。それに伴い、PPLATは29.1±1.2cmH2Oから25.0±1.2cmH2Oへと低下した(二つともP<0.001)。そして呼吸数を増やし(31.2±2.3回/分→37.0±1.9回/分; P<0.001)、炭酸水素ナトリウムを投与(20.2±0.8mEq/hr)したにもかかわらず、分時換気量は減少し(12.03±2.77L/min→9.03±1.18L/min; P<0.001)、PaCO2は上昇し(48.4±8.7mmHg→73.6±11.1mmHg; P<0.001)、pHは低下した(7.36±0.03→7.20±0.02; P<0.001)。PEEPを上昇させたのが奏功し(12.1±2.5cmH2O→15.2±0.8cmH2O; P<0.001)、一回換気量を低下させてもP/F比はそれほど低下しなかった(135±30→124±29; P<0.01)(fig. 3)。28≦PPLAT≦30cmH2Oの全患者が体外二酸化炭素除去のpH基準を満たしたため、静脈-静脈バイパスを導入した。

静脈-静脈バイパスを60~90分間行ったところ、PaCO2は50.4±8.2mmHgへと低下し、動脈血pHは7.32±0.03へ上昇した(P<0.001)。体外循環を72時間行った時点におけるPaCO2とpHはそれぞれ47.2±8.6mmHg、7.38±0.04であった(P<0.001; fig. 4)。体外二酸化炭素除去装置の使用期間は144時間であった。回路内のポンプ血流は191mL/分から422mL/分であった(心拍出量の5-10%に当たる;table 3)。ヘパリン投与量は3~19IU/kgで、APTT比は1.1~1.7に維持された(table 3)。

患者側に生ずる合併症は一例も観察されなかった。発生した機械的合併症をtable 4にまとめた。3例において14Fr.のダブルルーメンカテーテルを8Fr.のシングルルーメンカテーテルと交換しなければならなかった(両大腿静脈に一本ずつ)。その理由の内訳は、2例が再循環、1例がカテーテルのキンクであった。カテーテル交換時に、状態が悪化した症例は皆無であった。凝血による膜の目詰まりは3名に見られたが、輸血を要することはなかった。ARDSNetよりも低一回換気量で体外二酸化炭素除去を行う方法の実施に伴う看護仕事量の増加は認められなかった。体外循環を行った最初の5例目までは、DecapⓇの使用に習熟した技師が駐在した(9AM-5PM)。

CT画像で肺を小区画に分割しその周期的変化を表した平均肺濃度度数分布表を、図に示した(fig. 5)。28≦PPLAT≦30cmH2O の患者における試験開始時(ARDSNetの人工呼吸管理実施中)がfig. 5A左、ARDSNetよりも低一回換気量で体外二酸化炭素除去を行う方法を72時間実施したときのものがfig. 5A右である。ARDSNetよりも低一回換気量で体外二酸化炭素除去を行う方法での人工呼吸によって:(1) 肺重量が低下し、過膨張・無含気・低含気を呈する部分が減り、正常含気部分が増えた(P<0.001; table 2);(2) 周期的膨張が起こっている部分が増えた(なんらかの周期的膨張が発生する部位の合計量に占める割合19±6%→86±8%;P<0.01);(3) 周期的な過膨張が発生する部位が減った(なんらかの周期的膨張が発生する部位の合計量に占める割合67±5%→5±4%; P<0.01);(4) P/F比が有意に改善した(136±30→221±56; P<0.001)(fig. 3)。25< PPLAT <28cmH2Oの患者でも、試験開始時(ARDSNetの人工呼吸管理実施中)のデータは28≦PPLAT≦30cmH2O群と同様であった(fig. 5B左)。25< PPLAT <28cmH2O群では22人中12人においてARDSNetの人工呼吸管理をさらに72時間行った時点でCTを撮影した(fig. 5B右)が、このCTデータは、他の研究または臨床的に必要であったため撮影したCTで得られたデータを流用したものである。研究開始時と比べ、ARDSNetの人工呼吸管理をさらに72時間実施した時点では、肺重量が減り、過膨張・無含気・低含気部分が減り、正常含気部分が増えていた(P<0.05; table 2)が、周期的膨張および周期的過膨張が起こっている部分の肺容量の合計には変化は見られなかった(fig. 5B右)。P/F比には有意な改善が認められた(185±60→301±42; P<0.001)。

研究開始時における炎症性サイトカインの肺内濃度は、25< PPLAT <28cmH2O群の方が28≦PPLAT≦30cmH2O群よりも低かった(P=0.001)。25< PPLAT <28cmH2O群では、ARDSNetの人工呼吸管理をその後72時間行った時点でBALを再度実施したが、炎症性サイトカインの肺内濃度は開始時と遜色なかった。28≦PPLAT≦30cmH2O群では、ARDSNetよりも低一回換気量で体外二酸化炭素除去を行う方法によって肺内炎症性サイトカイン濃度が有意に低下した(P=0.001; fig. 6)。

教訓 ARDSNetよりも低一回換気量の人工呼吸と体外二酸化炭素除去を行う方法で、肺重量が低下し、過膨張・無含気・低含気を呈する部分が減り、正常含気部分が増え、P/Fが改善しました。
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