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高効率CHDFは転帰を改善しない~方法 [critical care]

Intensity of Continuous Renal-Replacement Therapy in Critically Ill Patients

NEJM 2009年10月22日号より

急性腎傷害(AKI; acute kidney injury)を発症すると、罹患率および死亡率が大幅に上昇する。ICUではAKIは日常茶飯事のように遭遇する病態であり、死亡の独立予測因子であることが明らかにされている。腎代替療法(RRT)を要するほどの重篤なAKIは、ICU患者のおよそ5%で発生し、その場合の死亡率は60%に達する。重症患者においては、開始時期や強度などをはじめとするRRTの最適な導入法はまだ確立されていない。単一施設における無作為化比較対照試験一編で、持続的腎代替療法に限って治療強度が検討され、浄化量を20mL/kg/hrから35~45mL/kg/hrへ上昇させたところ生存率が改善するという結果が得られた。しかし、後に行われた類似の単一施設研究の結果は錯綜している。

先頃報告されたVA/NIH Acute Renal Failure Trial Network Study(ClinicalTrials.gov number, NCT00076219)では、強化腎代替療法を行っても急性腎傷害患者の死亡率は低下しないという結果が示された。他の研究では専ら持続的腎代替療法のみが行われているのと異なり、この研究では血行動態が安定していれば間欠的RRT、不安定ならば持続的RRT患者を割り当てるというプロトコルが採用された。これは米国その他における臨床の実態を反映した研究デザインではあるが、こうしたRRTの導入法の影響を除いた治療強度そのものの正確な比較を行うにはいささか当を失している。そこで我々は、持続的強化腎代替療法を行うと90日後死亡率が低下するという仮説を検証すべく、無作為化比較対照試験を行った。

方法

研究デザイン
この研究の名称はThe Randomized Evaluation of Normal versus Augmented Level (RENAL) Replacement Therapy Studyと言い、前向き無作為化並行群間比較対照試験であり、急性腎傷害のある重症患者に二つの異なる強度で持続的腎代替療法を行い比較検討を行った。本研究はオーストラリアおよびニュージーランドに所在するICU35施設において2005年12月30日から2008年11月28日にかけて行われた。研究プロトコルについてはNEJM.org上で公開されている本論文のSupplementary Appendixに掲載した。

研究母集団
18歳以上の重症患者で急性腎傷害があり、治療担当医によって腎代替療法を要すると判断され、以下の条件のうち最低一つを満たす場合を登録候補とした:輸液療法を行っても改善しない乏尿(尿量<100mL/6hr)、血清カリウム濃度>6.5mmol/L、高度のアシデミア(pH<7.2)、BUN>70mg/dL(25mmol/L)、血清クレアチニン濃度>3.4mg/dL(300μmol/L)または臨床的に有意な臓器浮腫(例;肺水腫)。

当該入院期間中にすでに腎代替療法が実施されているか、末期腎不全のため維持透析が行われているかする患者は研究対象から除外した(選択基準、除外基準および割り当て治療法中止基準の詳細についてはSupplementary Appendix参照のこと)。

治療法
両群ともCVVHが行われた。置換液の注入部位はヘモフィルタの下流の回路内とし(つまり、後希釈)、透析液と置換液の割合は1:1とした。浄化量は無作為化割り当ての時点の患者体重から算出した。40mL/kg/hr(高強度群)または25mL/kg/hr(低強度群)の二群のいずれかに患者を無作為に割り当てた。脱血速度は150mL/minとした。置換液と透析液の注入速度を同じだけ低下させ、浄化量が両者を上回るようにして担当医が指示した量の除水を行った。ヘモフィルタにはAN69膜(Gambro)を用いた。透析液および置換液にはHemosol BO液(Gambro)を用いた。Gambro社は本研究の発端、設計、解析または報告のいずれにも一切の関わりを持たなかった。

転帰項目
研究対象とした主要転帰項目は無作為化割り当て90日後の全死因死亡である。二次および三次転帰項目は、無作為化割り当て後28日以内の死亡、ICU入室中の死亡、院内死亡、腎代替療法の中止、ICU滞在期間、入院期間、人工呼吸期間、腎代替療法実施期間、第90日における透析実施の有無および新規発症の何らかの臓器不全とした。

教訓 ここで紹介されているVA/NIH Acute Renal Failure Trial Network Study(下記記事参照)では、血行動態が安定している患者にKt/Vurea 1.2-1.4の間欠的血液透析を行う場合、週3回を超えて行っても転帰は改善しない、血行動態が不安定な患者にCHDFを行う場合、浄化量を20mL/kg/hr以上にしても転帰は改善しない、という結果が示されています。

参照:2008年9月8日 強化腎代替療法は急性腎不全の転帰を改善しない
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