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免疫能正常のICU患者におけるCMV感染症~方法 [critical care]

Prevalence and mortality associated with cytomegalovirus infection in nonimmunosuppressed patients in the intensive care unit

Critical Care Medicine 2009年8月号より

サイトメガロウイルス(CMV)には、通常、幼少期に感染し、その後も潜伏感染が続き、成人人口の三分の二以上では、生涯にわたり何ら症状が顕性化することはない。ヒト宿主の免疫機能が低下すると、特にT細胞の働きが低下すると、潜伏感染しているCMVが再活性化し、種々の病態を呈する。

実質臓器移植後、造血幹細胞移植後、固形癌、血液悪性腫瘍などの免疫抑制患者において日和見ウイルス感染として最も頻度が高いのがサイトメガロウイルス感染症である。CMV感染によって直接的に引き起こされる病態には、CMV症候群(CMV syndrome; 発熱、倦怠感および血球減少)とCMV病(CMV disease; CMV症候群 and/or CMV感染による臓器症状)がある。CMV感染によって間接的に引き起こされる病態としては、同種移植片拒絶反応、動脈硬化症および免疫状態の更なる悪化による他の日和見感染症の発症(細菌や真菌による敗血症)が挙げられる。

再活性化によるCMV感染症の発症には、長期入院、長期間のICU在室、重症敗血症、敗血症性ショックなどによる一時的な免疫抑制状態が関与することがある。動物実験では、細菌感染による敗血症を発症した個体は、CMVの再活性化が起こりやすいことが明らかにされている。ヒトを対象とした複数の観測研究やコホート研究でも、ICUに収容されている免疫抑制患者ではCMV再活性化や新規の感染が認められることが報告されている。

本研究では、文献の系統的レビューおよびメタ分析を行い、入室前には正常な免疫能を有していたと考えられるICU患者における活動性CMV感染症の発生率および死亡率を評価した。

方法

文献検索
データベース(MEDLINE、Embase、Cochrane Library)を用いて、2008年10月までに発表された論文を対象に、言語による制限を行わず系統的に検索を行った。米国FDAの発表や臨床試験関連サイト(www.clinicalstudyresults.orgおよびwww.clinicaltrialresults.org)といった本研究の目的と関連のあるウェブサイトも検索した。用いたキーワードは以下の通りである:cytomegalovirus, herpes virus, intensive care, critical care, ventilator, sepsis, trauma, critically ill, nonimmunosuppressedおよびimmunocompetent。

選別
選択基準 免疫抑制状態ではないICU患者を対象として、CMV感染症の発生率を系統的に評価することを目的とした研究を選択した。
除外基準 免疫抑制患者 and/or ICUに収容されていない患者のみが対象とされている研究は除外した。

データ抽出
以下の項目のデータを収集した:著者、発行年、研究デザイン、対象患者の性別・平均年齢、標本数、ICUの種別、ICU滞在期間、重症度スコア、人工呼吸実施の有無、重症敗血症もしくは敗血症性ショックの有無、基準時点におけるCMV抗体保有状況、CMV感染症の診断手法、生存状況。本論文の著者二人のあいだで、判断が分かれるときは、当該対象論文を詳読した上で食い違いを解決し合意に達した。

症例定義
以下のいずれかの方法のうち一つ以上でCMVが検出された場合を、活動性CMV感染症と定義した:ウイルス培養、PCR法またはCMV抗原(pp65抗原)検査。免疫抑制患者において従来用いられている定義、つまりCMV症候群およびCMV病、については、非免疫抑制患者を対象とした研究では大半で記載されていなかった。したがって、CMV症候群およびCMV病に関しては本研究では評価対象としなかった。「非免疫抑制」という用語は、免疫抑制作用のある薬剤を使用しておらず、かつ、ICU入室時に免疫抑制を来すような疾患がないことを指す。

教訓 免疫機能(特にT細胞の機能)が低下すると潜伏感染しているCMVが再活性化することがあり、直接的にはCMV症候群やCMV病、間接的には同種移植片拒絶反応、動脈硬化症および免疫状態の更なる悪化による他の日和見感染症の発症(細菌や真菌による敗血症)につながります。


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