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新型インフルエンザによるICU入室~結果 [critical care]

Critical Care Services and 2009 H1N1 Influenza in Australia and New Zealand

NEJM(www.nejm.org) 2009年10月8日

結果

2009年6月1日から8月31日にかけてICUに入室したA型インフルエンザ感染患者は856名であった。このうち722名(84.3%)は、2009年パンデミックA型インフルエンザ(H1N1)ウイルス感染確定例であった(Fig. 1)。2009H1N1インフルエンザウイルスの診断は、717名がPCR法、5名が血清検査で確定された。2009H1N1インフルエンザと診断された722名のうち、オーストラリアのICUに入室したのは626名、ニュージーランドのICUに入室したのは96名であった。オーストラリアまたはニュージーランドにおける6月1日から8月31日の期間のウイルス性肺臓炎によるICU入室患者数は、2005年が57名、2006年が33名、2007年が69名、2008年が69名であった(平均57名)。2009年冬期に季節性A型インフルエンザ(H1N1)ウイルス感染と確定したICU入室患者数は、37名であった。オーストラリアおよびニュージーランドの人口はあわせて25,180,770名と推計されているので、2009年冬期における2009H1N1インフルエンザによるICU入室例発生率は住民100万人あたり28.7名(95% CI, 26.5-30.8)となる。

ICU入室患者数とICU入室例発生率は、年齢区分によって大きなばらつきが見られた(Fig. 2)。年齢別のICU入室例発生率が最も高かったのは乳児(0歳-1歳)であったが(Fig. 2A)、ICU入室患者数が最も多かったのは25歳-49歳の患者群であった(Fig. 2B)。その他の人口統計学的データ、危険因子およびインフルエンザ症候群の様態についてのデータをTable 1に掲載した。

オーストラリアおよびニュージーランドでは、妊婦は一般人口の約1%を占めている。2009H1N1インフルエンザによるICU入室患者722名のうち66名(9.1%)が妊婦であった。BMIが判明した成人患者601名のうち、172名(28.6%)はBMI>35であった。2003年にオーストラリアで行われた抽出調査では、BMI>35の成人は5.3%を占めた。一般人口における喘息または慢性肺疾患患者の割合は13%前後と推測される。本研究の、2009H1N1インフルエンザ患者722名のうち15名については呼吸器基礎疾患のデータが得られなかったが、残り707名のうち231名(32.7%)に、喘息またはその他の慢性肺疾患があった。本研究では、先住民族が占める割合が一般人口に占める割合よりも多かった。アボリジニおよびトレス海峡島民はオーストラリアの人口の2.5%を占めるが、本研究でのオーストラリアにおける2009H1N1インフルエンザによるICU入室例のうち9.7%を占めた。マオリはニュージーランドの人口の13.6%を占めるが、本研究でのニュージーランドにおける2009H1N1インフルエンザによるICU入室例のうち25.0%を占めた。全体では、危険因子のない患者が229名(31.7%)を占めた。全患者のうち約半数(48.8%)に、2009H1N1インフルエンザウイルス感染に伴うARDSまたはウイルス性肺臓炎が認められ、20.3%が細菌性肺炎(細菌性肺炎によるものと考えられる片側または両側の非対称性の浸潤影が認められ、細菌感染が確定または疑われる)の合併を臨床的に診断された。

706名についてICUにおける人工呼吸実施の有無についてのデータを得ることができた。このうち、456名(64.6%)に中央値8日間(四分位範囲4-16日)の人工呼吸管理が行われた。人工呼吸実施日数は総計5249日で、人口100万人あたり208日(95% CI, 203-214)であった。人工呼吸が行われた456名のうち、53名(11.6%)には人工呼吸に次いでECMOが行われた。ECMO実施例は、人口100万人あたり2.1名(95%CI, 1.5-2.7)であった。その他の治療法の実施状況について得られたデータは、Supplementary Appendixに掲載した(NEJM.orgで入手可能)。

2009年9月7日時点で、722名のうち114名(15.8%)がまだ入院中で、そのうち37名(5.1%)が依然としてICUに収容されていた。この時点でまだ退院していなかった以上114名およびデータが得られなかった33名(ICUでの治療期間が不明な患者3名、入院による治療期間が不明な患者30名)を除くと、ICUでの治療期間の中央値は7.4日(四分位範囲3.0-16.0)(Fig. 3)、入院治療期間の中央値は12.3日(四分位範囲6.4-22.1)であった。

オーストラリアおよびニュージーランド両国全体において、および両国のいずれの地域においても、人口100万人あたりのICU入室患者数および人口100万人あたりのICUベッド使用数は期間中に大きな変化を見せた(Fig. 4)。2009H1N1インフルエンザ患者によるICUベッド使用状況は、総計8815 ICU bed-daysで、人口100万あたり350 bed-days(95%CI, 342-357)であった。オーストラリアおよびニュージーランド全体における100万人あたりのICUベッド使用数最大値は7.4床で、2009年7月27日からの一週間の期間にこの最高値が記録された。オーストラリアの各州またはニュージーランドの各地方における人口100万人あたりベッド使用数最大値の分布は、6.3床から10.6床であった(Fig. 4)。3ヶ月にわたる研究期間中に、2009H1N1インフルエンザ患者によって占められたICU bed-daysは全体の5.2%を占めた。オーストラリアの各州またはニュージーランドの各地方における2009H1N1インフルエンザ患者によるICUベッド占拠率の最高値の分布は、8.9%から19.0%であった。

2009年9月7日時点で、計608名の患者(84.2%)が退院していた。このうち103名(16.9%)が死亡退院、505名(83.1%)が生存退院であった。死亡退院および生存退院の患者について多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ、入院中死亡に関連する以下の三つの独立因子が同定された:ICU入室時にすでに気管挿管され人工呼吸が行われている(入院中死亡のOR, 5.51; 95%CI, 3.05-9.94; P<0.001)、何らかの基礎疾患(本研究での定義による)がある(OR, 2.56; 95%CI, 1.52-4.30; P<0.001)、年齢が高い(年齢が1歳増すごとのOR, 1.02; 95%CI, 1.01-1.04; P=0.002)。モデルとデータはよく適合した(Hosmer-Lemeshow検定でP=0.79)。

教訓 新型インフルエンザによるICU入室患者の入院中死亡に関連する独立因子は、 ICU入室時にすでに気管挿管され人工呼吸が行われている(オッズ比5.51)、基礎疾患(16歳以上ではAPACHEⅢスコア[0~299点であらわされ、点数が高い方が重症]の基礎疾患部門の評価で定義されている状態について、16歳未満では早産、免疫不全、繊維嚢胞症、先天性心疾患、神経筋疾患または慢性神経疾患)(オッズ比2.56)、年齢上昇(1歳につきオッズ比1.02)の三つでした。

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