Sedation and Analgesia in the Mechanically Ventilated Patient
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2012年3月1日号より
譫妄
譫妄とは、急性発症の認知機能障害であり、経過中に障害の程度が変動するのが特徴である。脳障害の一種であり、ICUにおける重症度の指標でもある。様々な研究が行われ発症頻度が報告されているが、11%から87%と大きなばらつきがある。譫妄の発症には多岐に及ぶ危険因子が関与する。たとえば、認知症や高血圧などの基礎疾患、そもそもの疾患の重症度(APACHEスコア)、アルコール乱用や薬物乱用(特に鎮静薬やオピオイド)などの社会歴などである。鎮静レベルを浅めにしていても、譫妄の発生頻度は低下せず、譫妄が発生すれば死亡率上昇、人工呼吸日数やICU滞在日数延長などの転帰悪化につながる。譫妄を発症した患者は、退院時の身体機能が不良であることが分かっている。譫妄の影響は入院中だけにとどまるわけではなく、退院後の長期転帰にも影を落とし、死亡率、QOL、認知機能などがいずれも悪化する。
譫妄に適切に対処する上で障害になっている要素の一つが、譫妄に対する認識不足である。CAM-ICU(Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit)は譫妄の評価法として有用性が確立していて、治療方針の決定に役立つ可能性がある。しかし、van Eijkらの研究では、CAM-ICUは特異度は実際に高いものの、当初の触れ込みと比べると現場における感度は半分程度しかないという結果が得られている。これがCAM-ICU自体の問題なのか、使用法の間違いによるものなのかを判断することはできないが、CAM-ICUを信頼性の高いスクリーニング法として活用できるように研究をさらに重ねる必要がある。集中治療譫妄スクリーニングチェックリスト(ICDSC)はCAM-ICUよりもやや詳細に譫妄の評価を行う方法である。CAM-ICUとの比較で、高い相同性があることを示した研究がある一方で、ICDSCの方が譫妄を検出する感度が高いとか、転帰不良で臨床的に何らかの対処を行わなけれ