Sedation and Analgesia in the Mechanically Ventilated Patient
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2012年3月1日号より
鎮静
痛みがないことを確認したら、次は鎮静の要否を評価する。疼痛を管理するだけで患者は楽になり、鎮静が不要な状態を確保できる可能性がある。薬物を使用しなくても、体位を調整するとか、声をかけて安心させるなどの方法が、患者の心を鎮めたり、興奮している患者を落ち着かせたりするのに有効な場合もある。しかし、通常はこのような薬物を使わない対処法だけでは十分な効果が得られなかったり、うまくいかなかったりする。その場合には、薬物を用いる鎮静を行えば、不快感を緩和し、人工呼吸器との同調性を改善し、呼吸仕事量を減少させることができる可能性がある。大半の症例では、鎮痛薬一剤and/or鎮静薬一剤を投与すれば、こうした目標を達成するのに十分である。時として鎮痛薬と鎮静薬の計二剤にもう一剤が追加投与されることがあるが、疼痛や鎮痛の評価スケールを基に到達目標を設定して投与量を調節しなければならない。そうでないと過鎮静などの副作用が発生したり、過量投与のため中毒症状が出現する危険性が増大したりするからである。酸素運搬量が低下していると予測される重症患者に人工呼吸を行うと酸素消費量が減少する。鎮静すれば、神経筋遮断薬を用いた場合と同様に、さらに酸素消費量を減らすことができる。神経筋遮断薬を使用すると筋力低下が遷延するため、重症患者管理においては使用されなくなってきている。しかし、Papazianらの研究では、ARDS重症例の発症初期では、48時間以内の使用であれば神経筋遮断薬が役立つこともあると報告されている。ガイドラインでは神経筋遮断薬を使用する場合はTOFモニタリングを行いながら投与量を調節すべきであるとしているが、TOFモニタリングによる調節と「臨床的判断」のみによる調とを比べた臨床研究では、前者がよいという結果も後者がよいという結果も示されており、いずれに軍配が上がるかは決着がついていない