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人工呼吸中の鎮静と鎮痛~鎮静の実際② [critical care]

Sedation and Analgesia in the Mechanically Ventilated Patient

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2012年3月1日号より

毎日の鎮静薬投与中断の他に、看護師主導プロトコルも有望であることが分かっている。Brookらはラムゼイ鎮静スケール3点という目標を設定し鎮痛および鎮静レベルの調節を行うベッドサイド用看護プロトコルの有用性を検討した。その結果、従来のケアと比べ人工呼吸期間、ICU滞在期間および入院期間が短縮することが分かった。さらにプロトコル使用群の方が気管切開率が低いという結果が得られた。De Jongheらは鎮静薬使用の決定に医師が協力する看護師主導鎮静アルゴリズムにATCE鎮静評価法を組み込んで評価を行い、人工呼吸日数とICU滞在日数が短縮することを明らかにした。看護師主導鎮静プロトコルが、鎮静薬投与中断よりも有意に転帰を改善すると報告している研究が一編のみあるが、この結果には再現性がなく、他の数多くの研究では毎日の鎮静中断に軍配が上がっている。カナダ臨床試験グループが行ったパイロット研究では、看護師主導鎮静プロトコルに鎮静中断を組み合わせた場合と組み合わせない場合とが比較され、この研究が有望であり安全に行えることが確認された。現在、このパイロット研究を基にした多施設無作為化臨床試験が進行中である。プロトコルを利用して鎮静管理を行っても、プロトコルを使わない従来法と比べて転帰は改善しないことがオーストラリアで行われた研究で明らかにされている。このような結果が得られた背景には、普段から看護スタッフが鎮静や人工呼吸器管理に濃密に関わっていたり、看護師一人当たりの患者数が少なかったりしたとか、非盲検化研究であるために研究プロトコル違反があった可能性などがあったと思われる。意識がはっきりしていて従命動作が可能で状態が安定している患者を対象とした、患者調節型鎮静(patient-controlled sedation)という新しい方法についての観測研究が行われ、鎮静レベルについての満足度が患者と看護師の双方で高いことが分かった。Stromらは毎日の鎮静中断を行う方法と、「無鎮静」とを比較する無作為化試験を実施した。無鎮静群の患者には、必要に応じてモルヒネが投与された。無鎮静群の方が人工呼吸器非使用日数が多く、ICU滞在期間および入院期間が短いという結果が得られた。自己抜管率は同等であった。転帰を改善するには多角的手法による鎮静が理想的な方法であると考えられる。そのためには、重症患者管理に従事する医師や看護師を対象として、疼痛や鎮静の評価スケールや鎮静プロトコルの利用に関する教育を行うことが不可欠である。様々な鎮静法についての賛否両論をよく理解し、それぞれのICUの実情に適した堅牢な鎮痛・鎮静アルゴリズムを構築することが重要である(Figure 2)。

鎮静法は人工呼吸日数や入院日数が短縮するといった短期転帰を改善する可能性があるだけでなく、長期転帰にも影響を及ぼすと考えられる。したがって、鎮静計画の立案は大きな意味を持っている。鎮静中断と自発呼吸試験を毎日行うと、自発呼吸試験だけを行い鎮静法は従来通りとした場合と比べ、人工呼吸器非使用日数が短いだけでなく、1年後死亡率も低いという結果が得られている。意識がはっきりしていればリハビリをしっかり行うことができる。一日一度は覚醒させて理学療法・作業療法を開始すると、退院時の機能回復の程度が優れていることが分かっている。呼吸不全を伴う重症疾患後にはPTSDを発症することがあるが、鎮静薬の使用量が多いほどPTSDを発症しやすいのではないかと考えられている。鎮静薬を毎日中断するとPTSDを減らすことができるという報告が一編ある一方で、別の研究ではそのような相関は認められないとされている。ただし、後者の研究は検出力が不足していると指摘されている。Treggiariらは浅いレベルの鎮静を目標とした場合には、深い鎮静を目標とした場合と比べ、PTSDを発症したり記憶障害が発生したりする頻度が低いことを明らかにした。鎮静薬およびオピオイド使用はICU譫妄の危険因子である。譫妄は重症患者の予後不良を示唆する指標であると考えられている。

教訓 鎮静中断と、自発呼吸試験の連日実施、リハビリの早期開始を組み合わせると転帰が改善するとされています。
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