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術後ハイリスク患者に対する制限輸血と非制限輸血の比較~結果 [critical care]

Liberal or Restrictive Transfusion in High-Risk Patients after Hip Surgery

NEJM 2011年12月29日号より

結果

対象患者
研究の対象となるかどうかを14438名について検討し、2016名が非制限輸血群(1007名)または制限輸血群(1009名)のいずれかに無作為に割り当てられた(Supplementary Appendix参照)。研究参加を途中で取りやめたのが14名、追跡調査不能となったのが2名、追跡調査が不十分だったのが1名であり、無作為化割り当ての対象となった患者のうち99.2%において主要解析に必要な追跡調査を完遂することができた。主要解析の対象となった1999名のうち、1075名(53.8%)については患者本人に直接聞き取り調査をすることができた。923名(46.2%)については代理人から聞き取りデータを収集した。一名については調査源が不明であった。

対象患者の平均年齢は81.6歳(51歳~103歳)で、62.9%に心血管系疾患があった。基準時点における患者背景については両群間に差はなかった(Table 1)。

ヘモグロビン濃度と輸血
輸血前の平均ヘモグロビン濃度は制限輸血群より非制限輸血群の方が1.3g/dL高かった(P<0.001)(Table 2)。輸血単位数の中央値は、非制限輸血群では2.0単位(四分位範囲1-2単位)、制限輸血群では0単位(四分位範囲0-1単位)であった。制限輸血群の59.0%では無作為化割り当て後に輸血が行われなかった。Figure 1に制限群および非制限群の毎日の最低ヘモグロビン濃度平均値を示した。

輸血プロトコル違反は、非制限群のうち9.0%、制限群のうち5.6%で発生した。輸血を行う原因となった症状をTable 2にまとめた。

転帰
60日後追跡調査時における、死亡もしくは介添人の介助なしでの歩行不能のいずれかに該当する患者の割合は両群で同等であった(非制限群35.2% vs 制限群34.7%, P=0.90)(Table 3)。主要転帰についての制限輸血群に対する非制限輸血群のオッズ比は1.01であった(95%信頼区間0.84-1.22)。絶対リスクの差は0.5パーセンテージポイントであった(95%信頼区間 -3.7~4.7)。患者の性別について有意な交互作用があり(P=0.03)、男性についての制限輸血群に対する非制限輸血群のオッズ比は1.45(95%信頼区間1.00-2.10)、女性については0.91(95%信頼区間0.74-1.13)であった。年齢、性別および心血管系疾患の有無についての交互作用は有意ではなかった(Supplementary Appendix参照).

30日後追跡調査時における死亡率は両群で同等で(非制限群5.2% vs 制限群4.3%)、絶対リスクの差は0.9パーセンテージポイント(99%信頼区間 -1.5~3.4)であった。60日後追跡調査時における死亡率も同等で(非制限群7.6% vs 制限群6.6%)、絶対リスクの差は1.0パーセンテージポイント(99%信頼区間 -1.9~4.0)であった(Table 3)。院内発症の急性心筋梗塞、不安定狭心症または死亡の発生率についても群間差は認められなかった(非制限群4.3% vs 制限群5.2%)。絶対リスクの差は-0.9パーセンテージポイントであった(99%信頼区間 -3.3~1.6)。入院中の何らかの臨床的問題や重篤な有害事象の発生頻度に関しても群間に有意差はなかった(Table 4)。入院期間、日常生活における下肢運動能力スコア、手段的活動度、疲労度、そして30日後および60日後における自宅居住率についても群間差はなかった(Table 3)。

教訓 60日後追跡調査時における、死亡もしくは介添人の介助なしでの歩行不能のいずれかに該当する患者の割合は両群で同等でした(非制限群35.2% vs 制限群34.7%, P=0.90)。急性心筋梗塞、不安定狭心症の発生率、入院期間、下肢運動機能、疲労度、自宅居住率のいずれについても差はありませんでした。
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