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TAAAの麻酔~疫学 [anesthesiology]

Case Scenario: Anesthetic Considerations for Thoracoabdominal Aortic Aneurysm Repair

Anesthesiology 2011年11月号より

胸腹部大動脈瘤はたいていCrawford分類に基づいて分類される(fig.2)。胸部大動脈瘤の平均直径拡大速度は0.1cm/年である。大きさは、破裂、解離もしくは死亡と直接的に相関する。上行大動脈瘤より下行大動脈瘤、非解離性大動脈瘤より解離性大動脈瘤、結合織疾患を伴わない動脈瘤よりマルファン症候群をはじめとする結合織疾患を伴う動脈瘤の方が、拡大速度が大きい。

Dapuntらは動脈瘤拡大の危険因子を検討し、高血圧、男性、70歳以上、喫煙歴および初診時の動脈瘤径5cm以上が急速な動脈瘤拡大の独立危険因子であることを明らかにした。胸腹部大動脈瘤患者500名以上を9年にわたって追跡調査した前向き研究では、直径6cm以上の動脈瘤は年7%の割合で破裂もしくは解離するという結果が得られている。この研究では、破裂する前に手術を行えば平均余命を達成できることも明らかにされている。CrawfordとDeNataleは、手術を受けていない胸腹部大動脈瘤患者94名について追跡調査を行った。対象患者の75%が2年以内に死亡し、そのうち50%の死因が動脈瘤破裂であることが分かった。したがって、胸腹部大動脈瘤は手術を行って治療することが一般論としては推奨される。特に直径6cm以上の動脈瘤の場合は手術を行うべきである。胸腹部大動脈瘤に対する手術実施の是非を決定する際には、利害得失を比較考量しなければならない。是正不能な基礎疾患がある患者では、周術期死亡のリスクの方が手術によって得られる便益よりも大きい可能性もあるので、慎重かつ賢明に手術の可否を決定すべきである。

昔から今までの様々な報告を概観すると、胸腹部大動脈瘤の予定手術の死亡率は5-25%である。胸腹部大動脈瘤の手術症例数が少ない施設で手術が行われたり、この術式の経験が少ない外科医が手術を行ったりすると死亡率が有意に高くなる。したがって、胸腹部大動脈瘤の手術症例は、症例数の多い施設に集約し、経験数が多い外科医が行うべきである。

教訓 直径6cm以上の胸腹部大動脈瘤は年7%の割合で破裂もしくは解離します。手術を受けていない胸腹部大動脈瘤患者の75%が2年以内に死亡します。胸腹部大動脈瘤予定手術の死亡率は5-25%です。
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