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ICUの毒性学~はち [critical care]

Toxicology in the ICU: Part 3: Natural Toxins

CHEST 2011年11月号より

ミツバチとスズメバチ

ミツバチやスズメバチに刺されると重いアレルギー反応があらわれることがあるが、数百か所を一度に刺されない限り中毒になることはない。刺される場所は頭頸部が多く、口腔内を刺されることも珍しくない。ミツバチの針には返し棘がある。刺すとこの返し棘のせいで針が抜けなくなるので、無理に抜くと内臓ごと引っこ抜けてしまってミツバチは死んでしまう。つまりミツバチは一回しか刺すことができない。一方、スズメバチは何度でも刺すことができる。ミツバチもスズメバチも同じような毒を持っていて、同じような症候を引き起こす。主な成分はメリチンとフォスフォリパーゼA2で、アレルゲンになるのは主としてフォスフォリパーゼA2である。

即時性のアナフィラキシー反応を除けば、刺されたとしても大半は局所の発赤、掻痒、浮腫および疼痛といった皮膚症状のみでおさまる。たくさんのハチに刺されたときには嘔吐、下痢、発熱、筋肉痛などの全身症状があらわれる。間質へ体内水分が移動し浮腫ができ、低血圧やショックに陥ることもある。凝固能低下、高トランスアミナーゼ血症、横紋筋融解症、溶血が刺されて数時間以内に発生しうる。一度にたくさんのハチに刺された場合の臨床症状はIgEの関与するアナフィラキシー反応に類似している。しかし、アナフィラキシー反応と異なり、ハチに刺された場合は遅延性中毒症状が24時間後までに起こる。

治療は対症療法である。輸液、副腎皮質ステロイドの全身投与、抗ヒスタミン薬および鎮痛薬を投与する。針が残っている場合は抜いてもよいが、初期治療においては必ずしも抜く必要はない。針を早く抜いたからといって転帰が変わるわけではないからである。全身症状が見られる、重篤な基礎疾患がある、成人では50か所以上小児では2か所/kg以上を刺された、のいずれかに該当する場合は全例入院させて管理する。電解質およびCKの測定、腎機能検査、凝固能検査、および心電図検査をはじめの24時間は繰り返し行って厳重に観察しなければならない。重症例では心筋逸脱酵素の測定も行う。全身症状が出現している場合は、抗ヒスタミン薬と副腎皮質ステロイドを静脈内投与する。

教訓 米国ではミツバチ類の刺傷による死者の方が毒ヘビ咬傷による死者よりも3〜4倍多いそうです。 

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