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ICUの毒性学~さそり [critical care]

Toxicology in the ICU: Part 3: Natural Toxins

CHEST 2011年11月号より

バークスコーピオン(Bark Scorpion、学名Centruroides sculpturatus)

北米に棲息するサソリのうちヒトに全身毒性を引き起こす毒を持つのはCentruroides sculpturatusだけである。このサソリの毒は、ナトリウムチャネルの不活化を阻害し連続する軸索発火を引き起こす神経毒である。この毒によるコリン作動性作用、アドレナリン作動性作用および神経筋遮断作用がもたらす臨床所見は、その程度によって4段階に分類されている(Table 3)。

バークスコーピオンに刺されると、その部位にただちに灼けるような痛みと感覚異常が生ずる。重症例では脳神経障害(眼球クローヌス、舌の線維束性攣縮、流涎、手足をばたばた動かす、咽頭筋の制御障害など)が見られる。嘔吐はたいていの場合自然におさまるが、誤嚥や口腔内分泌物の嚥下障害が生ずることもある。

治療の基本は対症療法である。軽症の場合は、大半が痛み止めのみで済む。重症例では、短時間作用性オピオイドの静脈内投与(フェンタニル1-2mcg/kgなど)や鎮静薬(ミダゾラム0.01-0.05mg/kgなど)が有効であるとされている。唾液分泌が多く流涎が見られる場合にはアトロピンを使用すると唾液を減らせる。しかし、流涎はあらわれたとしても一時的なものなので、アトロピンを繰り返し投与しても無駄である可能性が高く、かえって抗コリン薬中毒が発生する危険性が生ずる。対症療法の進歩により、バークスコーピオンの毒で死亡することはほとんどない。だが、呼吸不全が起こって死ぬ可能性がないわけではない。流涎と咽頭運動障害を呈する小児では気道が確保されていないとやばいことになる。そのような場合には気管挿管をしなければならないこともある。現在、米国とメキシコでは多価サソリF(ab')2抗毒素が使用され、有効性が確認されている。抗毒素がない場合は、重篤な症状は刺されてから24時間ほど続く。

教訓
バークスコーピオンは、アリゾナ州、ニューメキシコ州、コロラド川のカリフォルニア側に棲息しています。抗毒素は米国ではアリゾナ州のみで入手可能です。
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