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ICUの毒性学~鉄 [critical care]

Toxicology in the ICU: Part 3: Natural Toxins

CHEST 2011年11月号より



容器包装に係わる法律が整備されたことによって子供が鉄を誤飲する事故は減っているが、成人でも小児でも急性鉄中毒は依然として決して稀ではない。鉄はいろいろな形態で存在する。その代表が、フマル酸第一鉄、硫酸第一鉄、グルコン酸第一鉄といった鉄塩である。こういった第一鉄塩には、鉄元素がそれぞれ33%、20%、12%含まれている。急性鉄中毒が発症するか否かは、摂取した鉄元素の量によって決まる。摂取量が60mg/kg未満の場合は、命に関わるような重篤な中毒が発症する可能性は低い。ただし、問診から推定される摂取量は不正確であることが多い。

単回摂取の場合、鉄は受容体依存性および受容体非依存性の二つのプロセスを経て吸収される。鉄中毒は典型的には4段階に分けられる。第一段階は摂取から6時間以内に発生し、その症状は嘔吐、下痢および腹痛である。第二段階では胃腸症状がおさまり一見治って凪いだような状態になる。だが、無症状であっても代謝性アシドーシスは進行する。第三段階では、多臓器不全に陥る。第三段階を乗り切った患者は第四段階に至り、腸閉塞または幽門閉塞が起きる。

治療開始の是非を決定する際には、必ずしも血清鉄濃度だけを指標とするのではなく、臨床所見および代謝異常の程度に基づいて判断する。治療は、晶質液の大量投与からはじめる。頻回の嘔吐や下痢、中枢抑制、代謝性アシドーシスまたは低血圧などの症状が著しい症例では、メシル酸デフェロキサミンを静注してキレート化する。全腸管洗浄を実施した場合の転帰についてのデータは報告されていないが、大量に鉄を摂取した場合には考慮してもよいであろう。

教訓 鉄は60mg/kgまでの摂取であれば命が危ぶまれるような中毒にはなりません。鉄のキレート剤として標準的に用いられてきたのはメシル酸デフェロキサミン(デスフェラールⓇ)です。最近、新しい鉄キレート剤としてデフェラシロックス(ExjadeエクジェイドⓇ)が登場し、輸血による鉄過剰症に用いられています。デスフェラールは静注しなければなりませんが、エクジェイドは経口製剤です。
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