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ICUの毒性学~鉛 [critical care]

Toxicology in the ICU: Part 3: Natural Toxins

CHEST 2011年11月号より



鉛中毒の発生数は全体としては減っているが、米国でも世界中でも依然として重大な健康上の問題である。大半の鉛中毒は、単回摂取によるものではなく、長期間摂取による慢性中毒である。単回摂取で発生する急性中毒にお目にかかることは稀であるが、下痢、溶血、肝壊死、脳症および腎不全を引き起こす。

よくあるのは、慢性鉛中毒が元々あり気づかれずに経過していたものが、比較的急激に症候をあらわすというパターンである。鉛を含有する物体(カーテンのおもりなど)を飲み込んでしまって、しばらくしてから致死的な中毒症状が発生するというような場合がその例である。慢性中毒では、貧血、腹痛、倦怠感、腎不全および脳症があらわれる。小児ではX線写真で骨に「鉛線」が見られることがある。これは、鉛が沈着していることを示すものではなく、カルシウム濃度が高い部分に相当する。体内に残存する銃弾は、関節液、供水または髄液に長時間直接触れない限り、鉛中毒を起こすことはない。

鉛中毒の患者を診察する際には、毛細血管から採取した検体による鉛濃度測定はスクリーニング検査にしかならない非常に不正確な検査であり、治療方針の決定の参考にはならないことを念頭に置かなければならない。治療方針を決定するには全血検体を用いて鉛濃度を測定する。鉛に曝露されていた期間を推定することができない場合には、赤血球遊離プロトポルフィリン(FEP)や亜鉛プロトポルフィリン(ZPP)の濃度を測定するとよい。慢性中毒ではFEPやZPPが上昇するが、急性中毒では正常である。

全血検体を用いて鉛濃度を測定し、患者の年齢および臨床症状を踏まえて評価を行って治療を行うのが模範的なやり方である。CDCのガイドラインを参考にすると、各症例に適した治療方針を決定することができる。血中鉛濃度が多少高いだけで無症状の場合は、キレート剤は必ずしも推奨されない。キレート剤の使用が必要な症例では、2,3-ジメルカプトコハク酸(succimer)またはジメルカプロールと、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムを用いる。

鉛脳症の治療
対症療法(例、痙攣に対するベンゾジアゼピンまたはバルビツレートの投与、頭蓋内圧亢進の治療)を行い、キレート剤を投与する。五日間にわたり、体表面積一平方メートルあたりジメルカプロール75mgを4時間おきに深部筋注する。ジメルカプロール投与から4時間以上経過した時点で、体表面積一平方メートルあたりエチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム1500mg/dayを静注する(持続静注または2~4分割して投与)。これも5日以上継続する。キレート剤には腎毒性があるので注意する。

教訓 鉛中毒はほとんどが慢性中毒です。鉛中毒の治療薬はキレート剤です。血中鉛濃度が多少高くても、症状がなければキレート剤を投与する必要はありません。
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