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ICUの毒性学~消化管除洗 [critical care]

Toxicology in the ICU: Part 1: General Overview and Approach to Treatment

CHEST 2011年9月号より

消化管除洗

消化管除洗とは、毒物が消化管から吸収されるのを極力防ぐことを目的として行われる何らかの手段を指す。従来行われている消化管除洗は、活性炭や吐根(催吐薬)シロップの投与、胃洗浄、全腸管洗浄などである。しかし、吐根シロップの投与や胃洗浄は有用性が証明されてない上に、好ましくない副作用があるため、もはやルーチーンで行うことは推奨されていない。

大半の薬物中毒において、活性炭は原因薬物の摂取後1時間以内の投与が有効であるが、サリチル酸などの場合は1時間以上経過してから投与しても効果を期待できる。推奨投与量は、小児では0.5~1g/kg、成人では25~100gである。炭化水素、アルコール、大多数の金属(タリウム以外)は活性炭に吸着されない。活性炭投与の合併症として誤嚥が起こりうる。誤嚥すると長期間の入院が必要となったり、肺傷害が発生したり死亡する可能性もある。したがって、反射があり気道が防御されている患者および挿管患者以外では活性炭は禁忌である。よくある副作用は、嘔吐、腹部膨満感、便秘、下痢などである。相対的禁忌は、内視鏡検査や腹部手術の予定がある場合である。活性炭を使用したときは、下剤(ソルビトールなど)を投与してはならない。活性炭をルーチーンで使用しても、罹患率/死亡率が低下することをはっきりと示した研究は今のところはないことを銘記しなければならない。

活性炭の単回使用による胃内除洗と異なり、活性炭を計画的に繰り返し投与することによって原因薬物をより積極的に除去する方法もある。これは、活性炭反復投与と呼ばれる。活性炭反復投与が様々な薬物(テオフィリン、ダプソン、フェノバルビタール、カルバマゼピンおよびキニン)の血中濃度の低下に有効であることが示され推奨されているが、死亡率などの決定的な転帰の改善につながったとする報告はない。ルーチーンで活性炭反復投与を行うことは推奨されない。

全腸管洗浄は、ポリエチレングリコールを主成分とした溶液を大量に(1.5~2L/hr)投与し、毒物が消化管を速やかに通過するように働きかける方法である。健康被験者を対象とした研究では、アスピリン腸溶錠やリチウム徐放錠の吸収を抑制するのに全腸管洗浄が有効であることが明らかにされている。ルーチーン実施は推奨されていないが、ベラパミルや鉄をはじめとする金属(特に元素としての鉄を高濃度に含む物質)の中毒、違法薬物を詰め込んだ容れ物を飲み込んでいて症状がまだ出現していない場合など、毒性が高く吸収に時間がかかる物質を摂取した患者では全腸管洗浄の実施を検討すべきである。反射がなかったり舌根沈下が見られたりして気道に不安がある患者や、イレウスや腸閉塞がある場合には禁忌である。活性炭と同様に、臨床的転帰が改善することを示すデータはない。

ボタン電池や薬物胃石は内視鏡で除去するが、違法薬物を詰め込んだ容れ物を飲んだ場合には開腹術を行うのが通例である。ボタン電池が食道や気管に引っかかってしまった時には、内視鏡的に除去しなければならない。交感神経刺激薬を詰め込んだ容れ物を飲んで、容れ物から薬剤が漏れ出して症状が出現している場合は、緊急開腹術を実施しなければならない。ヘロインであれば、保存的に管理することも可能である。薬物を充填した容れ物によって腸閉塞が起こったときには、やはり手術を行わなければならない。

教訓 消化管除洗には、活性炭の投与と全腸管洗浄があります。全腸管洗浄は、ポリエチレングリコールを主成分とした溶液を大量に(1.5~2L/hr)投与する方法です。胃洗浄をルーチーンで行うことは推奨されていません。活性炭や全腸管洗浄で転帰が改善することを示したデータはありません。
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