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ICUの毒性学~昏睡カクテル [critical care]

Toxicology in the ICU: Part 1: General Overview and Approach to Treatment

CHEST 2011年9月号より

昏睡カクテル

原因不明の意識障害には、まず「昏睡カクテル」を投与するのが過去の慣例であった。昏睡カクテルとは、ブドウ糖、サイアミンおよびナロキソンのことであり、この三剤を静注するのである。血糖値は迅速検査が可能であり、低血糖の場合は直ちに診断して血糖値を補正することができる。血糖値の迅速検査を行うことができない状況では、血糖値が判明しなくてもとりあえずブドウ糖を投与しなければならない。

サイアミン(ビタミンB1)はウェルニッケ脳症の悪化予防を目的にブドウ糖と共にルーチーンで投与される。投与量は100mgである。原因不明の意識障害に対するサイアミンの予測的投与の有用性を裏付ける根拠はなく、質の高くない症例集積研究に依拠するに過ぎない慣習である。アルコール乱用に限らず、悪阻などの別の疾患にウェルニッケ脳症が合併することがある。低血糖が疑われるときは、サイアミンが手元にないからと言ってブドウ糖の投与を躊躇してはならない。そして、本当にウェルニッケ脳症が疑われる症例では、100mgどころではない、もっと大量のサイアミンを投与しなければならない。

ナロキソンはオピオイド受容体の競合的アンタゴニストである。原因不明の意識障害患者にナロキソンを投与するのは、オピオイドによる呼吸抑制を改善するためである。治療目標の理想は、離脱症候群を引き起こすことなく、気管挿管を回避することである。そのため、初回投与量は0.2~0.4mg静注とするのが妥当である。効果が見られなければ、2~10mgまで投与量を速やかに増やしてもよい。通常、半減期は30~80分であるため、原因となったオピオイドの作用により再び鎮静効果が出現し、追加投与が必要になることがある。ナロキソンの投与が繰り返し必要な場合には、効果が認められる最小投与量の三分の二の量を一時間当たりの投与量として持続投与してもよい。メサドンや徐放性オキシコドンなどの長時間作用性オピオイドの中毒では、ナロキソンを何度も投与しなければならないことが多い。オピオイド中毒に対しナロキソンを投与すると、オピオイド離脱症候群が起こるだけでなく、けいれん(トラマドールまたはメペリジンを投与した場合)や非心原性肺水腫といったナロキソンによる副作用も懸念される。

ブプレノルフィンなどのオピオイド受容体アゴニスト-アンタゴニストの拮抗にナロキソンを使用すると、その効果の現れ方は釣り鐘型曲線を描く。静注量が4mg以上では、それより少量の場合よりも効果が小さくなってしまうため、慎重に投与量を調節しなければならない。複数の催眠鎮静薬による呼吸抑制が認められる場合には、ナロキソンを投与しても何ら臨床的効果は得られず、有害作用のみが現れる可能性がある。

教訓 オピオイド中毒に対しナロキソンを投与すると、オピオイド離脱症候群が起こるかもしれません。けいれんトラマドールまたはメペリジンの中毒に対しナロキソンを投与すると痙攣が出現することがあります。ナロキソン自体の副作用は、非心原性肺水腫です。
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