SSブログ

心外・脳外以外の手術における周術期脳血管障害~リスク管理② [anesthesiology]

Perioperative Stroke in Noncardiac, Nonneurosurgical Surgery

Anesthesiology 2011年10月号より

経口抗凝固薬内服中の患者の周術期管理

経口抗凝固薬内服中の患者に対する手術はごくありふれている。こういう患者の周術期管理には難しい問題がつきまとう。経口抗凝固薬を中断することによる血栓塞栓症の発症リスクと、継続することによる出血のリスクとを比較考量しなければならないからである。だが、周術期の抗血栓療法に関する決断を下すのに役立つデータは不足している。そのため、決定版と言えるような管理法は確立していないといってよい。現在のところ、周術期の経口抗凝固薬の使用法には三通りのやり方がある:(1)ワーファリンを継続する、(2)手術前後の一定期間はワーファリンを中止する、(3)ワーファリンを中止し、周術期は他の短時間作用性の抗凝固薬を投与する。

出血のリスクが低い手術では、ワーファリンを継続してもおそらく安全に手術を行うことができると考えられる。しかし、大手術や侵襲が大きい手技を行う場合は一般的には、出血を避けるために抗凝固薬を中止しなければならない。American College of Chest Physiciansが制定した2008年のガイドラインでは、リスク評価を行った上で必要であれば経口抗凝固薬を中止し短時間作用性の抗凝固薬に変更する方法が採用されていて、臨床の現場ではこれを参考にするとよい(table 3)。

抗血小板薬内服中の患者の周術期管理

脳血管障害の再発予防に投与されている抗血小板薬を中止すると、虚血性脳血管障害の再発リスクが増大する。手術を行うだけでも血栓形成傾向が生ずるが、その上、常用している抗血小板薬を中止すると反動的に血栓形成傾向が増強する。一方、抗血小板薬を周術期も継続すると多量の出血が起こるリスクが増す。今のところ、抗血小板薬を使用している患者の周術期管理法の参考となるデータはなく、実際に臨床で行われている対処法にはばらつきがある。頭蓋内血管にステントが留置されていて抗血小板薬を投与されている患者の周術期管理には、さらに多くの問題がつきまとう。このような患者において抗血小板薬を中止すると、脳血管障害発生のリスクが高くなるのは確実である。POISE2試験(抗血小板薬投与継続の利害得失を評価する目的で行われている大規模比較対照試験)は、先頃患者の登録の段階に入り、2014年に完了する見込みである。この研究によって、アスピリン内服中患者の周術期管理に資するデータが示されることであろう。

教訓 手術を行うと血栓形成傾向が生じます。その上常用している抗血小板薬を中止すると反動的に血栓形成傾向が増強します。
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。