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術中覚醒高リスク患者の術中覚醒を防ぐには~方法 [anesthesiology]

Prevention of Intraoperative Awareness in a High-Risk Surgical Population

NEJM 2011年8月18日号より

方法

研究概要

この研究は三か所の医療施設で行われた。BAG-RECALL研究の実験プロトコルの詳細については先行する別の論文で紹介済みである。

対象患者

予定手術を受ける18歳以上の患者のうち、イソフルラン、セボフルランまたはデスフルランによる全身麻酔が予定され、術中覚醒のリスクが高い患者を対象とした。術中覚醒リスクの基準は、過去の研究、総説およびガイドラインに準拠して決めた。危険因子が一つでもある場合を、術中覚醒リスクが高いと判断した(Table 1)。認知症、同意書の記入ができない、脳卒中の既往があり神経学的後遺症がある、のいずれかに該当する場合は除外した。

研究デザイン

本研究は前向き研究で、対象患者は無作為にBIS群またはETAC( end-tidal anesthetic-agent concentration)群に割り当てられた。麻酔担当医は患者がどちらの群に割り当てられたかを分かった上で麻酔を実施したが、術後に患者から聞き取りをした調査員、調査内容を検討した専門家および統計担当者は割り当て群を関知しなかった。

手順

対象患者全員の前額部にBIS Quatro(Coviden)のセンサを装着した。ETAC群に使用したBISモニタはBIS値が表示されないように細工し、麻酔担当医はBIS値を知り得なかった。両群とも、呼気終末麻酔ガス濃度の値を監視することができるようにした。BIS群およびETAC群両方のプロトコル内容を教育およびプロトコル遵守度向上の目的で麻酔担当医に知らせた。

BIS群ではBISが60を超えるか40を下回るとアラームが鳴るように設定した。BIS群ではETACについてはアラーム設定は行わず、特定の範囲内にETACを維持するようにとの指示は一切与えなかった。ETAC群ではETACが年齢調整MACの0.7を下回るか1.3を超えるとアラームが鳴るように設定した。ETAC群でアラーム設定が不可能な際は、吸気麻酔ガス濃度についてのアラームを設定した。人工心肺中は麻酔ガス濃度は人工心肺回路の送血側で測定した。BIS値またはETACのいずれかを監視することを忘れないようにし、患者が覚醒していないか常に注意を促すため、麻酔器にその旨記した標識を貼り付けた。BIS群、ETAC群とも、いずれのプロトコルも麻酔薬の使用量を減らすことを意図して作成されたものではない。例えば、患者の循環動態が不安定であれば麻酔薬の投与量を麻酔担当医の判断で減らしてもよいこととした。この行為そのものは術中覚醒の危険性を増大するが、本研究のプロトコルでは禁じなかった。BIS値とETACは1分以下の間隔で記録した。記録方法は、MetaVision(iMDsoft)を用いた電子麻酔記録、マクロソフト社のエクセルへのデータ転送またはTrendFace Solo(ixellence)を用いたデータ転送のいずれかである。コンピュータデータまたは電子麻酔記録が不十分であった少数例では、代替データ源として手書き麻酔器録およびモニタトレンドのデジタル写真を用いた。

術中覚醒の評価には、修正Brice質問票を用いた。術後72時間以内と抜管30日後の二回にわたって評価を行った。いずれかの聞き取り調査の際に「眠りに落ちていった」時と「目が覚めた」時のあいだの記憶があると答えた患者には、別の評価者が面接し、質問項目や順序が詳しく決められた聞き取り調査を追加実施した。術中記憶があると答えた患者全員に、心理学者への紹介が可能であることを伝えた。全患者の調査が終了した後に、術中記憶があると答えた患者に対する聞き取り調査の内容を三人の専門家が別々に検討し、術中覚醒あり、術中覚醒の可能性あり、術中覚醒なしの三つのうちいずれに該当するかを判断した。術中覚醒ありまたは術中覚醒の可能性ありの症例については、ミシガン術中覚醒分類基準(Michigan Awareness Classification Instrument)の該当するカテゴリーに分類した。この過程に関わった三人の専門家は、Michigan Awareness Control Study(NCT00689091)の術中覚醒症例の検討にも関わった。三人の専門家のあいだで意見が別れた場合は、ASAの術中覚醒登録システム(Anesthesia Awareness Registry)で術中覚醒症例の検討を担当している三人とは別の専門家が最終判断を下した。

統計解析

主要転帰項目は、BIS群およびETAC群における術中覚醒の発生率である。術中覚醒高リスク患者における術中覚醒の予測発生率は、B-Aware試験およびB-Unaware試験の結果を参考にして算出した。術中覚醒を防ぐ上で、BISプロトコルはETACプロトコルを上回る効果は得られない、ということを帰無仮説とした。BISプロトコルは術中覚醒を防ぐ上でETACプロトコルより優れているというのを、対立仮説として設定した。BISプロトコルの方がETACプロトコルより術中覚醒発生率が0.4パーセンテージポイント低いこと(ETAC群で0.5%の術中覚醒発生率が、BIS群で0.1%に低下)を検出力87%で明らかにするには6000名の患者が必要であると見積もった。二次解析として予め計画したのは、BS群の方がETAC群より術中覚醒ありの症例と術中覚醒の可能性ありの症例をあわせた発生率が低いかどうかの検討である。

教訓 BIS群はBIS40~60を目標値とし、ETAC群はETACが0.7~1.3年齢調整MACになるように麻酔管理を行いました。ETAC群ではBIS値は分からないようにしました。
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