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重症敗血症にHESはよくない~結果 [critical care]

Renal effects of synthetic colloids and crystalloids in patients with severe sepsis: A prospective sequential comparison

Critical Care Medicine 2011年6月号より

結果

対象患者

三つの連続する各期間に計400名の重症敗血症患者が当ICUに入室した。除外基準に該当したのは54名であった(ICU入室以前から透析を要する慢性腎不全があった者45名、先行する別のHESを用いた無作為化比較対照試験に登録されていた者9名)。

6%HES製剤を投与された患者は118名、4%ゼラチン製剤を投与されたのは87名、晶質液を投与されたのは141名であった。基準時点における患者特性は概ね各群同等であった。ただし、HES群では癌患者が少なく、HES群およびゼラチン群では腹腔内感染に由来する敗血症患者が少なく、ゼラチン群では腹部手術患者が少なく心臓/胸部手術患者が多かった。HES群のSOFAスコアは他の二群より低かったが、クレアチニン値、クレアチニンクリアランスおよびSAPSⅡについては群間差は認められなかった(Table 1)。

血行動態および水分出納

ICU入室当日から14日後までの血行動態と水分出納を解析した。平均動脈圧は第2日以降、HES群が他の二群より有意に高かった(Fig. 1)。平均心拍数には差はなかったが、中心静脈血酸素飽和度は晶質液群が他の二群を上回る日が複数日あった(Fig. 1)。第3日まではノルアドレナリン投与量は同等であったが、第4~8日および第10~11日においては晶質液群が他の二群よりノルアドレナリン投与量が多かった(Fig. 1)。平均一日当該輸液投与量および平均一日水分出納量は基準日(第0日)および第1日の両日で晶質液群が他の二群より有意に多かった(Fig. 1)。合計水分投与量をTable 2にまとめた。ICU入室全期間中の累積水分投与量はHES群が有意に多かった(Table 2)。第0日から第1日の累積水分投与量の比は、HES群:晶質液群が1:1.47、ゼラチン群:晶質液群が1:1.44であった。当初4日間の累積水分投与量については、HES群:晶質液群が1:1.17、ゼラチン群:晶質液群が1:1.21であった。

合併症発生率および死亡率:急性腎傷害と腎代替療法

腎毒性薬剤の使用状況については大差なかったが、HES群において抗真菌薬の使用が多く、ゼラチン群でACE阻害薬の使用が多かった。腎代替療法開始時における血清クレアチニン値についても差は認められなかった。

急性腎傷害(AKI)を発症したのは、晶質液群47%、HES群70%(調整p値0.002)、ゼラチン群68%(調整p値0.025;Table 3)。RIFLE分類の該当する最悪の分類に患者を振り分けた。RIFLEのriskおよびinjuryには少数の患者しか該当せず、群間の偏りはなかった。大半の患者はfailureに該当した。HES投与後の患者のうち47%(調整p値0.002)、ゼラチン投与後の患者のうち40%(調整p値0.162)および晶質液投与後の患者のうち25%がfailureに分類された。晶質液群よりHES群の方が腎代替療法を実施された患者が多い傾向が認められた(20% vs 34%;調整p値0.086)。腎傷害重症度および腎代替療法実施率ともに、未調整p値の段階ではゼラチン群の方が晶質液群を有意に上回っていたが、調整済みp値を算出したところ有意差は消失した(Table 3)。

重症度スコア、ICU死亡率、院内死亡率およびICU在室期間については有意差はなかったが、晶質液群ではICU在室期間が短い傾向が認められた(Table 3)。

AKIを二値従属変数とする多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、基準時点におけるクレアチニン値、心臓胸部外科手術、抗真菌薬、20%アルブミン製剤、ヨード造影剤、6%HES製剤および4%ゼラチン製剤がAKIの独立危険因子であることが分かった。体重あたり投与量が増えることによる有害作用の発現の有無については、晶質液のみで量依存性に有害作用が増強する関係があり、一次関数または、むしろ二次関数に近い相関関係があると考えられた(Table 4)。腎代替療法を従属変数とする多重ロジスティック回帰分析でも、HESとゼラチンは独立危険因子であることが判明した。腎代替療法については、HES、ゼラチンおよび晶質液のいずれに関しても、投与量が多いほど腎代替療法実施率が高いというような関係は認められなかった。

教訓 急性腎傷害(AKI)を発症したのは、晶質液群47%、HES群70%、ゼラチン群68%でした。HESとゼラチンは晶質液より有意にAKIを起こしやすいという結果です。ICU入室全期間中の累積水分投与量が最も多かったのはHES群でした。AKIの独立危険因子は、基準時点のクレアチニン値、心臓胸部外科手術、抗真菌薬、20%アルブミン製剤、ヨード造影剤、6%HES製剤および4%ゼラチン製剤でした。
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