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重症患者における経静脈栄養の開始時期:早期vs 晩期~方法① [critical care]

Early versus Late Parenteral Nutrition in Critically Ill Adults

NEJM Online First 2011年6月29日

方法

研究設計

本研究は多施設前向き無作為化並行群間比較試験である。プロトコルと統計解析の詳細はNEJM. Orgに掲載した。方法については別の論文ですでに報告済みである。

Baxter Healthcareから使途限定なしの研究助成金を受領した。この助成金によって本研究に要した費用の三分の一未満がまかなわれた。Baxter Healthcareは本研究の設計、データ収集、解析、データ解釈、原稿執筆および投稿是非の判断のいずれにも関与していない。

対象患者

本研究に参加したICUに2007年8月1日から2010年11月8日までのあいだに入室した成人患者のうち、栄養危険度スクリーニング(NRS; nutritional risk screening)が3点以上で(1点~7点、3点以上で栄養状態に問題が生ずる危険性あり)、除外基準に当てはまらない患者全員を対象とした(Fig. 1)。

対象患者は連続的に登録し16種類の診断群に基づき層別化した上(Supplementary Appendix Table 1, NEJM.org)、1:1の配分で経静脈栄養早期開始群または経静脈栄養晩期開始群のいずれかに無作為に割り当てた。転帰判定の担当者は、割り当て群を関知しなかった。

研究開始から数えて1500名の患者がICUから退室した時点で中間安全性解析を実施した。その結果、当初の予定通り研究を最後まで行うようにとの助言をデータ・安全性監視独立委員会から得た。中間解析では有効性の主要評価項目については解析されなかったので、最終解析における有意水準の変更は求められなかった。

研究手順

経静脈栄養早期開始群には20%ブドウ糖液を経静脈投与した。ICU入室第1日目の目標エネルギー摂取量は400kcal/dayで、第2日は800kcal/dayとした(Fig.2およびSupplementary Appendix のTable2)。経腸栄養(OliclinomelまたはClinimix, Baxter社)は第3日に開始した。経腸栄養と経静脈栄養を足して目標カロリーに到達するように、経腸栄養の投与量を調節した(第3日に経腸栄養または経口摂取のみで目標カロリー全てをまかなえると担当医が判断した場合を除く)。算出した目標カロリーから経腸栄養で投与され吸収されるに至ったと思われるカロリーを引いて経静脈栄養で投与するカロリー量を計算した。目標カロリー量にはタンパク熱量も含み、算出にあたっては理想体重、年齢および性別による補正を行った(Supplementary Appendix のTable3)。目標カロリーの最高値は、全例で2880kcal/dayとした。算出した目標カロリーの80%を経腸栄養で投与されているか、経口摂取を再開できると判断された場合には、経静脈栄養を減量または完全に中止した。その後経腸栄養または経口摂取で、算出した目標カロリーの50%未満しか栄養を摂取できなくなってしまったら、経静脈栄養を再開した。

晩期開始群では適切な補液を行う目的で早期開始群と等量の5%ブドウ糖液を投与した。経腸栄養による水分投与量を考慮して投与量を設定した。ICU入室後7日目の時点で経腸栄養によるカロリー投与量が不十分な場合は、第8日目から経静脈栄養を開始し目標カロリーを達成した。

第2日目までに摂食が不能であった患者には全員に経腸栄養を実施した(製剤は主にOsmolite, Abbott社)。経腸栄養投与時には禁忌でない限り半坐位とした(Supplementary Appendix のTable4)。経腸栄養の指示内容には、投与速度を一日二回増大させ、腸管運動促進薬を使用し、十二指腸に留置したチューブから栄養を投与することを全例でもれなく明記することとした。早期開始群、晩期開始群ともICU入室直後から微量元素、ミネラル(カリウム、リンおよびマグネシウム)およびビタミンを経静脈的に投与し、再栄養に伴い微量栄養素欠乏による問題が生ずるのを予防した(Supplementary Appendix のTable2)。

各患者における経腸栄養および経静脈栄養の一日投与量をプロトコルに基づいて算出する際、患者データ管理システム(Meta Vision, iMDsoft)を用いた。ICU退室後の栄養管理は、患者が収容された病棟の担当医にまかされた。血糖値が80~110mg/dLとなるようにインスリンを持続静注した。動脈血検体を用いて血糖値を1~4時間おきに測定した。測定に当たっては血液ガス分析器(Radiometer ABL 715または725)を用い、血糖値以外の項目の測定も行った。参加した全てのICUで、ガイドラインに則って人工呼吸器離脱を進めた。集中治療を継続しても見込みがないと判断された場合には、集中治療上級医二名および関係専門家とで合議の上、終末期医療への移行を決定した。

教訓 経腸栄養は両群ともICU Day#3から開始しました。経静脈栄養早期開始群にはICU入室直後から20%ブドウ糖が投与され、Day#1の目標カロリーは400kcal/dayに設定されました。晩期開始群には、補液の目的で5%ブドウ糖が投与され、Day#8から不足カロリー分を経静脈的に投与しました。
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