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緑膿菌肺炎~投与期間 [critical care]

Pneumonia Due to Pseudomonas aeruginosa Part II: Antimicrobial Resistance, Pharmacodynamic Concepts, and Antibiotic Therapy

CHEST 2011年5月号より

抗菌薬投与期間

抗菌薬の至適投与期間を明らかにするため、VAPを発症したICU患者51名についての前向き無作為化二重盲検試験が行われ、投与期間8日と15日のどちらが優れているが検討された。対象患者中42名において、気管内採痰の定量培養で緑膿菌に感染していることが確認された。抗菌薬投与期間が8日であった群の方が15日群よりも再発率が有意に高かった(40.6% vs 25.4%)。ただし、ICU滞在期間や死亡率は同等だった。他方、多剤耐性緑膿菌の出現率は15日群の方が有意に高かった。これは、往々にして見過ごされている重大な注意点である。投与期間を決定する際は、再発の危険性と、多剤耐性もしくは汎薬剤耐性緑膿菌の発生リスクとを症例ごとに比較考量する必要がある。したがって、緑膿菌肺炎の診断が確定されておらず、抗菌薬投与開始から3日以内に状態が安定すれば、投与期間は8日にすべきである。一方、抗菌薬の予測的投与が緑膿菌肺炎に対して奏功しなかったり、それまでのICUにおける経過が複雑であったりする症例では、投与期間を15日にする方がよいかもしれない(Fig. 2)。

ICUにおける緑膿菌肺炎に対する抗菌薬吸入用製剤:嚢胞性線維症や肺移植患者の肺炎に対するアミノグリコシド系薬またはコリスチンの吸入製剤の有効性が検討されている。アミノグリコシド系薬の吸入剤を用いると、高い肺組織アミノグリコシド濃度を達成することができる一方で、血中濃度は無視できる程度の低いレベルに止まる。

症例報告や遡及的症例対照研究において、コリスチンの吸入製剤(多くが静注製剤との併用)が肺炎に対して有効であると報告されている。VAP患者100名にコリスチン吸入製剤を投与した前向き無作為化試験では、転帰が良好であった患者の割合は生食を吸入させた対照群と同等であった(約50%)。吸入製剤の併用療法としては、コリスチンとトブラマイシンの吸入製剤を併用する方法が、嚢胞性線維症患者の多剤耐性緑膿菌肺炎難治例に実施されている。嚢胞性線維症患者の緑膿菌感染に対するアズトレオナムの吸入製剤の適応が認可されている。

まとめ

多剤耐性緑膿菌は複数の耐性機構を備えているため、ICU領域における深刻な問題として耳目が集まっている。動物実験、in vitro研究、PK/PDデータおよび幅広い臨床研究で得られた知見を総合し、我々は抗緑膿菌βラクタム系抗菌薬と、アミノグリコシド系薬または抗緑膿菌キノロン系薬を併用する抗菌療法を推奨する。この際、キノロン耐性緑膿菌が増加しているため、キノロン系薬の使用は控えるべきであるかもしれない。可能であればβラクタム系薬は持続静注によって投与すべきである。なぜなら、βラクタム系薬は持続静注すると、抗菌活性がより強く、より長く発揮されるとともに、人件費の削減にもつながるからである(看護師や薬剤師が費やす時間の削減)。アミノグリコシド系薬は薬力学的にも利便性の上でも一日一回投与が優れている。アミノグリコシド系薬の投与期間は、可能な限り5日未満とする。多剤耐性緑膿菌に対して抗菌活性のある抗菌薬がポリミキシン(コリスチン)をおいて他にないことがよくあるため、一部のICUではポリミキシンが使用されている。本レビューでは、ICU患者の肺炎に対する抗菌薬の予測的投与についての実践的アルゴリズムを示した。

教訓 緑膿菌肺炎の診断が確定されておらず、抗菌薬投与開始から3日以内に状態が安定すれば、投与期間は8日にします。一方、抗菌薬の予測的投与が緑膿菌肺炎に対して奏功しなかったり、それまでのICUにおける経過が複雑であったりする症例では、投与期間を15日にする方がよいかもしれません。ただし、投与期間が長引くと多剤耐性緑膿菌が出現しやすくなるので注意が必要です。
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