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緑膿菌肺炎~治療アルゴリズム [critical care]

Pneumonia Due to Pseudomonas aeruginosa Part II: Antimicrobial Resistance, Pharmacodynamic Concepts, and Antibiotic Therapy

CHEST 2011年5月号より

ICUにおける肺炎治療アルゴリズム

ICUにおける緑膿菌肺炎の治療方針を、読者に分かりやすいよう図にまとめた(Figs 1, 2)。この治療方針の一部は、SinghらおよびTorresが提案している方法を踏襲して作成された。肺に浸潤影がありICU肺炎として治療が行われている患者の実に50%~70%は、実は感染ではなくて、ARDS、鬱血性心不全、無気肺などの感染以外の病態のため浸潤影を呈しているという点を強調したい。したがって、患者が本当に呼吸器系の感染症であると確証を得ることが重要である。感染していないICU患者や、重症ではないICU患者に見境なく抗菌薬を投与すると死亡率が上昇することが分かっているからである。重症度の評価は必須である(Fig. 1)。点数化して評価するのに便利なものとして、APACHEスコアやPitt Bacteremiaスコアがある。重症例であれば、抗菌薬を予測的に投与する必要がある。多剤耐性緑膿菌定着または感染の既往があったり、その時点までのICU滞在期間中にすでに抗菌薬を投与されていたりすると、多剤耐性菌がいつ発生してもおかしくない。一般的には、カルバペネム系薬以外の抗緑膿菌βラクタム系薬が選択されることが多い(Fig. 1, Table 1)。自施設における感受性パターンに基づいて、はじめの予測的投与に用いる抗菌薬を選択しなければならない。過去30日以内にすでに抗緑膿菌βラクタム系薬が投与されている場合は、別の系統の抗緑膿菌抗菌薬を選択する。アミノグリコシド系薬を従とする多剤併用を行う場合は、細菌検査で効果が確認されるか、臨床的に改善が認められれば、アミノグリコシド系薬は3~5日以内に中止するとよいだろう。

CPISスコアは、短期間の単剤投与が適している症例を判別するためのスクリーニングに利用される(Fig. 1)。すでに述べた通り、状態が安定している患者では緑膿菌が分離されても感染ではなくて定着であるに過ぎないことが往々にしてある。CPISスコアを用いれば、悪気はないが無知な関係者が本来必要のない抗緑膿菌薬を投与してしまうのを防ぐことができる。治療開始から丸3日が経過したら、臨床的評価を再度実施すべきである(Fig. 2)。その際には痰培の結果が必要である(Fig. 2)。当初の状態が中等症以下で単剤投与が行われていた症例では、3日間の単剤投与後もCPISが依然として低ければ抗菌薬を中止してもよい。その後は、感染の徴候が出現しないかどうかを注意深く観察する。

コリスチンの投与

多剤耐性緑膿菌の出現をうけ、コリスチンに再び脚光が当たっている(Fig. 2)。ICU肺炎を対象とした対照群のない数編の研究で、コリスチンが有効であるとの結果が得られている。多剤耐性緑膿菌または多剤耐性アシネトバクターによるVAPについての症例対照研究が行われ、イミペネム投与例では72%、コリスチン投与例では75%において臨床的に有効性が認められた。前述の通り、PK/PDに関する研究ではコリスチンは6~8時間おきの投与の方が、12時間おきよりも好ましいことが分かっている。

動物実験およびin vitro研究において、コリスチンとリファンピシン、コリスチンおよびカルバペネムの組み合わせは緑膿菌に対して相乗効果を発揮することが示されている。しかし、ヒトを対象とした研究ではコリスチンを含む多剤併用の有効性を裏付ける結果は得られていない。コリスチンはもとより市販されているあらゆる抗菌薬にin vitroで耐性を示す汎薬剤耐性緑膿菌(PDRP)によるVAP症例も発生している。その主な危険因子はコリスチンとカルバペネムの多剤併用が13日を超えて実施した場合であると報告されている。

コリスチンは可逆性の腎毒性と可逆性の神経毒性を発現することが知られている。しかし、重症患者では色々な異常が入り組んで存在しているため、このような有害作用を薬剤によるものなのかそうでないのかを見極めるのは困難である。コリスチンによる腎毒性は、解決可能な問題である。コリスチンは、腎毒性はあるのに聴神経毒性はない珍しい薬剤である。 

教訓 肺に浸潤影がありICU肺炎として治療が行われている患者の50%~70%は、感染以外の原因によって浸潤影を呈しています。感染していないICU患者や、重症ではないICU患者に見境なく抗菌薬を投与すると死亡率が上昇することが分かっています。
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