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重症感染小児は輸液負荷で死亡率が上昇する~結果 [critical care]

Mortality after Fluid Bolus in African Children with Severe Infection

NEJM online 2011年5月26日

結果

対象患者
A層では2009年1月13日から2011年1月13日までのあいだに3141名の患児を無作為に割り当てた。内訳は、アルブミンボーラス群1050名、生食ボーラス群1047名および対照群1044名であった。研究登録基準を満たしていないのに登録された3名についても除外せずにすべての解析を行った(Fig. 1)。各群に割り当てられた患児の基準時点における背景因子は類似していた(Table 1)。年齢中央値は月齢24ヶ月(四分位範囲13ヶ月~38ヶ月)、62%が虚脱状態、15%が昏睡、83%が呼吸窮迫状態であった。患児の過半数(52%)に末梢循環不善の徴候が一つ以上認められた。その多くが、高度頻脈と四肢冷感であった。対象患児の51%(2079名中1070名)に中等度から高度のアシドーシス、39%(2981名中1159名)に乳酸アシドーシス(乳酸5mmol/L以上)が見られた。平均(±SD)ヘモグロビン濃度は、7.1±3.2g/dL、血糖値は124±70mg/dLであった。マラリアの確定診断が下された症例が57%(3123名中1793名)、HIV陽性患児は4%(2483名中106名)を占めた。主要評価項目記録時点までに追跡調査から脱落した患児は17名(0.5%)に止まった。内訳は、アルブミンボーラス群7名、生食ボーラス群8名および対照群2名であった。無作為化割り当て4週間後における生存状況が確認されたのは、各群それぞれ97%(1050名中1023名)、98%(1047名中1024名)、98%(1044名中1024名)であった。B層に登録された患児は全体で29名であった。収縮期血圧中央値は57mmHg(四分位範囲51-59mmHg)であった(NEJM.org掲載補遺Table 1)。B層では追跡調査から漏れた患児はいなかった。A層、B層いずれにおいても、無作為化割り当て48時間後にその時点における診断名を担当医が報告した(補遺Table 2)。

投与した輸液
アルブミンボーラス群の99.5%(1050名中1045名)、生食ボーラス群の99.4%(1047名中1041名)に、割り当てられた通りの輸液療法が行われた(Fig. 1)。対照群に割り当てられた1名には、割り当て1時間後まで生食のボーラス投与が行われた(低血圧であったため)。アルブミンボーラス群の割り当て1時間後までの1時間、および1時間後から2時間後までの1時間に投与された全輸液製剤(血液製剤を含む)の合計量は、それぞれ20.0mL/kg(四分位範囲20.0-20.0)、4.5mL/kg(四分位範囲1.7-16.2)であった。生食ボーラス群ではそれぞれ20.0mL/kg(四分位範囲20.0-20.0)、5.0mL/kg(四分位範囲1.7-16.0)、対照群ではそれぞれ1.2mL/kg(四分位範囲0-2.5)、2.9mL/kg(四分位範囲0.2-4.2)であった。8時間後までに投与した輸液製剤総量は、アルブミンボーラス群40.0mL/kg(四分位範囲30.0-50.0)、生食ボーラス群40.0mL/kg(四分位範囲30.4-50.0)、対照群10.1mL/kg(四分位範囲10.0-25.9)であった。全体で1408名の患児に輸血が行われた。内訳はアルブミンボーラス群472名(45%)、生食ボーラス群487名(47%)、対照群449名(43%)であった。対照群では輸血がやや早い時点で開始される傾向が観察されたが、割り当て2時間後の時点における輸血実施例の占める割合および輸血量は、各群同等であった(補遺Fig.1およびTable 3)。

評価項目
割り当て48時間後までに、アルブミンボーラス群111名(10.6%)、生食ボーラス群110名(10.5%)、対照群76名(7.3%)が死亡した。生食ボーラス群の輸液負荷を行わない対照群に対する死亡相対危険度は1.44(95%信頼区間1.09-1.90; P=0.01)、アルブミンボーラス群の生食ボーラス群に対する死亡相対危険度は1.00(95%信頼区間0.78-1.29; P=0.96)、ボーラス群(アルブミンボーラス群+生食ボーラス群)の輸液負荷を行わない対照群に対する死亡相対危険度は1.45(95%信頼区間1.13-1.86; P=0.003)(Table 2)であった。死亡リスクの絶対差は3.3パーセンテージポイントであった(95%信頼区間1.2-5.3)。研究実施施設間の偏り(補遺Fig. 2)やプロトコル修正前後における無作為化データの偏りは認められなかった(Fig. 2)。B層では、アルブミンボーラス群13名中9名(69%)、生食ボーラス群16名中9名(56%)が死亡した(アルブミンボーラス群に対する死亡相対危険度1.23; 95%信頼区間0.70-2.16; P=0.45)。

無作為化割り当て1時間後における死亡率は三群同等であった(アルブミンボーラス群1.2%、生食ボーラス群1.1%、対照群1.3%)。割り当て1時間後以降は、いずれの時点においてもボーラス群は対照群よりも常に死亡率が高かった(Fig. 2A)。死亡例は、大半が24時間後までに死亡していた(259名、87%)。割り当て48時間後以降の死亡例はごく少数で、対照群の晩期死亡率がボーラス群より高いわけではなかった(Fig. 2B)。予め設定したいずれのサブグループにおいてもボーラス群の方が対照群より死亡率が上回っていた(Fig. 3)。ボーラス輸液に何らかのメリットがあることを示すエビデンスは、どのサブグループについても得られなかった。四週間後の時点で神経学的後遺症が認められた症例は、アルブミンボーラス群22名(2.2%)、生食ボーラス群19名(1.9%)、対照群20名(2.0%)であった(ボーラス群 vs 対照群の比較でP=0.92)(Table 2)。神経学的後遺症症例の24週間後までの追跡評価は現在進行中である。

患児26名において肺水腫が疑われた(アルブミンボーラス群14名、生食ボーラス群6名、対照群6名)。頭蓋内圧亢進は45名において認められた(アルブミンボーラス群16名、生食ボーラス群18名、対照群11名)(肺水腫と頭蓋内圧をあわせたボーラス群と対照群との比較でP=0.17)(Table 2)。死亡例および有害事象についての詳細は補遺Table 4AおよびTable 4B参照のこと。

教訓 8時間後までに投与した輸液製剤総量は、アルブミン群40.0mL/kg、生食群40.0mL/kg、対照群10.1mL/kgでした。生食群の対照群に対する死亡相対危険度は1.44、アルブミン群の生食群に対する死亡相対危険度は1.00、ボーラス群(アルブミン群+生食群)の対照群に対する死亡相対危険度は1.45でした。

参考記事
輸液動態学 
正しい周術期輸液 
敗血症性ショック:輸液量が多いほど死亡率が高い 
外傷患者救急搬送中の輸液で死亡率が上昇する
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