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外傷患者に対するトラネキサム酸の早期投与~結果 [critical care]

The importance of early treatment with tranexamic acid in bleeding trauma patients: an exploratory analysis of the CRASH-2 randomised controlled trial

THE LANCET 2011年3月26日号より

結果

死亡者数は全体で3076名であり、出血を原因とする死亡はそのうち1063例であった(35%)。出血による死亡のリスクはトラネキサム酸投与により有意に低下した。トラネキサム酸群10060名のうち出血死したのは489名(4.9%)であったのに対し、偽薬群10067名のうち出血死は574名(5.7%)であった(RR 0.85, 95%CI 0.76-0.96; p=0.0077)。出血以外の原因による死亡リスクについては、有意差は認められなかった(table 1)。

治療開始までに時間によって患者を分類して、基準時点における特性をTable 2に示した。Figure 1は、出血を原因とする死亡例のサブグループ解析の結果である。対象症例のうち9例については、治療開始までの時間が不明であった。受傷後1時間以内にトラネキサム酸が投与されると出血死リスクが有意に低下することが分かった(トラネキサム酸群198/3747[5.3%] vs 偽薬群286/3704[7.7%]; RR0.68, 95%CI 0.57-0.82; p<0.0001)。受傷後1~3時間以内にトラネキサム酸が投与された場合も、出血死リスクは有意に低下した(147/3037[4.8%] vs 184/2996[6.1%]; RR0.79, 95%CI 0.64-0.97; p=0.03)。受傷から3時間後以降にトラネキサム酸が投与された場合には、出血死リスクは有意に増大した(144/3272[4.4%] vs 103/3362[3.1%]; RR1.44, 95%CI 1.12-1.84; p=0.004)。トラネキサム酸が出血死リスクにおよぼす影響は、受傷から投与開始までの時間によって左右されるという有力なエビデンスが得られた(p<0.0001)。予め設定した基準時点特性やその他の治療法などとの交互作用について調整してもなお、投与開始までの時間による強い交互作用が確認された(p<0.0001; データは掲載していない)。

受傷後直後にトラネキサム酸を投与した場合の予測オッズ比は0.61であった(95% CI 0.50-0.74)。この予測オッズ比は、受傷後トラネキサム酸を投与するまでの時間が1時間延長するごとに1.15倍となると想定された(95% CI 1.08-1.23)。オッズ比と95%信頼区間が、受傷後治療開始までの時間によって変化する様態をFigure 2に示した。治療開始までの時間の平方根による交互作用については、有意差は認められなかった(OR=0.99; p=0.38)。

収縮期血圧、無作為化時点のGCS、受傷機転のいずれのサブグループにおいても、同じような結果が認められた(figure 1)。出血以外の原因による死亡のリスクにトラネキサム酸が及ぼす影響についても、サブグループ間のばらつきはなかった(table 1)。

教訓 出血死リスクはトラネキサム酸投与により有意に低下しました。受傷後1時間以内にトラネキサム酸が投与された場合が最も出血死リスク低下効果が顕著でした。受傷から3時間後以降にトラネキサム酸が投与された場合には、出血死リスクは有意に増大しました。
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