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外傷患者に対するトラネキサム酸の早期投与~はじめに [critical care]

The importance of early treatment with tranexamic acid in bleeding trauma patients: an exploratory analysis of the CRASH-2 randomised controlled trial

THE LANCET 2011年3月26日号より

はじめに

CRASH-2試験では、重大な出血を呈するかそのリスクがある成人外傷患者に対し受傷後8時間以内にトラネキサム酸を投与すると、全死因死亡率が有意に低下し(RR0.91, 95%CI 0.85-0.97; p=0.0035)、かつ、血管閉塞による合併症は認められないという結果が得られた。この試験の結果を受け、外傷患者プロトコルにトラネキサム酸の使用を収載する気運が世界的に広がっている。

CRASH-2試験の顛末から、いくつかの重要な問題点が浮かび上がった。この試験は、予定手術患者の出血量がトラネキサム酸投与によって減少するというエビデンスに刺激されて行われた。その仮説となる機序は、線溶を阻害して止血能を改善するというものである。しかし、記録されている輸血量に関してはトランサミン群と偽薬群のあいだに有意差はなく、CRASH-2試験では線溶系の測定は行っていないため、トラネキサム酸投与による線溶抑制効果は不明である。このため、トランサミンによる死亡率低下は、止血能の改善というよりも、プラスミンによる炎症促進作用の減弱によってもたらされるという別の仮説も考えられる。

さらに、外傷患者の中でもどのような特性を持つ患者にトラネキサム酸を投与すべきか、という問題についても議論が続いている。CRASH-2試験では、当初の統計解析計画で定めた少数のサブグループについての解析結果が報告されている。このサブグループ解析では、受傷後投与開始までの時間、収縮期血圧、GCSおよび受傷機転によって分類したサブグループについて、トラネキサム酸が主要エンドポイントである全死因死亡率に及ぼす影響が検討された。いずれのサブグループについても際立った特徴は見いだされなかったため、トラネキサム酸が以上のいずれのサブグループにおいても等しく有効であると考えられた。

全死因死亡率は、患者にとって重要な項目であるとともに、競合リスクによる方法論上の問題にも左右されないため、主要エンドポイントとして設定したのは妥当である。しかし、トラネキサム酸の生物学的効果を直接反映する転帰項目が、トラネキサム酸投与がほとんどもしくは全く改善をもたらさない転帰項目によって霞んでしまった可能性がある。以上のような懸念から、トラネキサム酸が出血を原因とする死亡率におよぼす影響について探索解析を行った。CRASH-2で予め設定されたのと同様のサブグループについて解析を行った。ただし、転帰項目はトラネキサム酸による効果がもっとも顕著にあらわれると推測される項目、つまり、出血による死亡率とした。

教訓 CRASH-2試験では、成人外傷患者に対し受傷後8時間以内にトラネキサム酸を投与すると、全死因死亡率が有意に低下するという結果が得られました。ただし輸血量に関してはトランサミン群と偽薬群のあいだに有意差はありませんでした。そこで、この探索解析では、出血による死亡率についての検討が行われました。
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