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術後血糖管理~勧告 [critical care]

Glycemic Control in the Intensive Care Unit and during the Postoperative Period

Anesthesiology 2011年2月号より

重症患者および術後患者の血糖管理についての勧告

世界中の専門家が結集し、周術期患者および重症患者を対象にした血糖管理についての公式勧告が練られた。この勧告のまとめをここに紹介する。

ICUにおける血糖目標値

(1) 成人ICU患者では高度高血糖(180mg/dL以上)に陥らないようにしなければならない。広く一般的に適用可能な上限値は現時点では確定していない。
(2) 緊急時には厳格血糖管理を行ってはならない。
(3) ICU患者においては、血糖値の変動が大きくならないようにしなければならない。
(4) ICUにおける血糖値管理に用いる薬剤は、インスリンの経静脈投与のみとする。

周術期における血糖値管理

(1) 術後のインスリン抵抗性を抑止するよう努める。具体的には、低体温および出血を避け、禁忌でなければ手術2時間前までに炭水化物50-100gを含む飲料を摂取させる。
(2) 心臓血管手術または複雑な手術の術後、緊急手術中および肥満患者においては180mg/dL以上の高血糖を避ける。
(3) 術中の血糖値管理は、インスリンの持続静注で行う。また、30-60分ごとに血糖値を測定する。

低血糖

(1) 高度の低血糖は血糖値40mg/dL未満の場合と定義されている。低血糖は遅滞なく検出し、臨床徴候が認められなくても直ちに是正しなければならない。
(2) ICU患者において低血糖が疑われる場合、毛細血管から採取した検体よりも、動脈血または静脈血検体で血糖値を測定する方が信頼性の高い値を得ることができる。毛細血管から採取した検体では、血糖値を過大評価してしまうことが多い。

炭水化物投与量

(1) 重症患者では、輸液製剤のブドウ糖濃度を濃すぎないようにすれば高血糖の発生頻度を低下させることができると考えられる。
(2) 食事再開後はシリンジポンプによるインスリン持続静注を中止してもよい。食事を再開したら、少なくとも毎食前の一日三回は血糖値を測定しなければならない。
(3) ICU患者における一日のエネルギー投与量は、国際基準に従い約25kcal/kg/dayとする。しかし、炭水化物投与量の最適値は、疾患の種類、重症度および発症からの経過日数によって決定しなければならない。

血糖値測定

血糖値の測定は、検査室の測定器または血液ガス分析器で行う。検体採取部位として望ましい順番は以下の通りである:動脈、静脈、毛細血管。測定器の性能を知った上で誤差があるかもしれないことを考慮して血糖値を解釈する。

アルゴリズムとプロトコル

血糖値管理は標準プロトコルに基づいて行うべきである。インスリン持続静注のための投与経路は統一する。正式なプロトコルを作成する際は、そのときの状況に逐次追随するように設計し(直近の血糖値によってインスリン投与量を決定する)、シリンジポンプによる短時間作用性インスリンの持続静注によって血糖調節を行うことを明記し(少なくとも推奨し)、低血糖が発生した場合の対処法と監視手順を提示しなければならない。その他、炭水化物の術前投与や、コンピュータ補助血糖調節プロトコルなどを盛り込んでも良い。血糖管理プロトコルの導入に先立ち、スタッフの教育を行い、仕事量が増えることについての理解を求める必要がある。

まとめ

重症患者において高血糖の放置が有害であることは、言を俟たない。重症患者の血糖値を細かく調節すべきであることは、多くのデータによって裏付けられている。しかし、強化インスリン療法による厳格血糖管理という枠組みについては見直すべきである。なぜなら、複数の大規模無作為化比較対照試験が行われているものの、一貫した結果は得られておらず、厳格血糖管理による効果が認められないという報告や、むしろ死亡率が上昇するという結果も示されているからである。したがって、厳格血糖管理は、実施部門、対象患者、スタッフの教育などをいかに工夫しても、日常臨床の定番とはなり得ない。低血糖のリスクが極めて低く、血糖値変動も少ない血糖管理法の新規開発が望まれる。コンピュータ補助血糖管理アルゴリズムの発展や医師や看護スタッフ教育の成果を活かすには、血糖値測定機器の性能や血糖値測定法の向上に一層の努力を傾注すべきである。以上の課題が達成されるまでは、各施設においてハード、ソフト両面の利用可能な資源を踏まえた独自のプロトコルを作成し導入すべきである。

教訓 ICU患者および大手術後の患者では血糖値を180mg/dL以下に制御すべきです。低血糖(<40mg/dL)には迅速に対応しなければなりません。
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