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ペースメーカ/ICD患者の周術期管理~術中管理③ [anesthesiology]

Practice Advisory for the Perioperative Management of Patients with Cardiac Implantable Electronic Devices: Pacemakers and Implantable Cardioverter-Defibrillators: An Updated Report by the American Society of Anesthesiologists Task Force on Perioperative Management of Patients with Cardiac Implantable Electronic Devices

Anesthesiology 2011年2月号より

放射線治療

CIED患者が放射線治療を受けるに当たっての、特異的な管理手法を検討した文献はほとんどない。

放射線治療による電磁妨害防止についての勧告

本特別委員会は、放射線治療はCIED患者にも安全に行うことができると考える。CIED装置は放射線照射野外に位置するようにしなければならない。したがって、場合によっては放射線治療開始に先立ちジェネレータを外科的に移動させなければならないことがある。大半のCIED製造会社は、放射線照射中および照射終了時には、ジェネレータ作動確認の実施を推奨している。放射線治療に伴い、ペーシング不全やペースメーカ制御不能(runaway pacemaker)などの問題が発生する可能性がある。

電気痙攣療法

電気痙攣療法に伴う電磁妨害やCIEDの永久的作動不良についての臨床研究は行われていない。一編の症例報告では、電気痙攣療法に先立ち患者のICDを停止した2症例が紹介されているが、電気痙攣療法の実施が、その後ICD機能に及ぼした影響の有無については述べられていない。しかし、この研究の著者は、CIED患者に対して電気痙攣療法を行う際には重大な心リスクがある可能性を示唆している。電気痙攣療法を行うと、一時的な心電図変化(P波増高、QRS波形の変化、ST-T変化など)が生じるほか、もともと心疾患がある患者では循環器合併症(不整脈や心筋虚血など)が起こる可能性がある。電気痙攣療法には生理的ストレスがつきものである。例えば、当初は頻脈と血圧上昇が起こり、続いて徐脈と血圧低下が見られる。このため、心機能が低下している患者に電気痙攣療法を行うと、術後長時間(数時間から数日)にわたって心不全に陥ることがある。

電気痙攣療法による電磁妨害防止についての勧告

電気痙攣療法を行うと心筋や神経系に影響が及び短期間または長期間続くことがあるが、本特別委員会はCIED患者に電気痙攣療法を行っても、CIEDが故障したり作動不良に陥ったりすることはないと考える。CIED患者に電気痙攣療法を行う際には、電気痙攣療法を指示した医師および担当の循環器科医と、初回およびそれ以降の電気痙攣療法の実施要領について相談する。CIED患者に対する電気痙攣療法の実施に先立ち、全例でCIEDの総合点検を行わなければならない。電気痙攣療法の最中にはICDの作動を停止させるべきである。一方で、電気痙攣療法による血行動態の変化に起因する心室性不整脈を治療する準備を整えておかなければならない。ペースメーカ依存患者では、電気痙攣療法中に心拍数および心調律を維持するため一時的ペーシングを要することがある。また、筋電位抑制が発生するのを避けるためCIEDを非同期モードにしなければならないこともある。

緊急除細動/カルディオバージョン

CIED患者では、周術期に緊急除細動または緊急カルディオバージョンの実施を要する事態が起こりうる。そのような場合、ジェネレータおよびリードを通る電流を少なくすることが一番の問題になる。症例報告によれば、CIEDに関連する有害事象を防ぐためには除細動またはカルディオバージョン用パッドまたはパドルを正しい位置に装着することが重要であるとされている。

緊急除細動/カルディオバージョンについての勧告

ICDをマグネットモードにして手術を実施しているときに緊急で除細動またはカルディオバージョンを行わなければならなくなったら、実施前に電磁妨害を起こす可能性のある医療機器の使用を中止し、マグネットを除去してICDによる抗頻拍治療が可能となるようにしなければならない。そして、CIEDが適切に作動し頻拍が治るかどうかを観察する。ICDが留置されていて、術前のプログラミングによってICDが作動しないようになっている患者では、再度プログラミングを行い作動可能となるようにすることが選択肢となり得る。以上のような対処によってもICDが作動を再開しない場合には、緊急で体外式除細動またはカルディオバージョンを行う。

上記のようなICDについての注意点に留意しつつも、現行のACLSガイドラインや救急ガイドラインに従って早急に除細動/カルディオバージョンを実行することの方が優先する。ICDの故障を顧慮するよりも、可及的速やかに除細動/カルディオバージョンを行うことの方が重要である。

致死的不整脈が発生した場合には、ACLSガイドラインで定められている通りにエネルギーレベルを設定し、パドルを適切な位置に当てる。可能であれば電流がジェネレータおよびリードを通過するのを極力避けるため、以下のような対策を講ずる。(1) 除細動/カルディオバージョンのパッドまたはパドルをジェネレータからできる限り離れた位置に設置する。(2) 除細動/カルディオバージョンのパッドまたはパドルをCIEDのジェネレータおよびリードがなす軸と垂直となるように設置し、前方と後方からパッドまたはパドルがジェネレータおよびリードを挟み込むような恰好になるようにする。 CIEDの有無に関わらず、除細動/カルディオバージョンを行う際のエネルギーレベルの設定は、臨床的に適切な値とすることが必須である。また、パドルは、その状況で可能な最善の位置に設置しなければならない。

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