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麻酔文献レビュー 2010年12月① [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年12月号より

Autologous Blood Transfusion During Emergency Trauma Operations. Arch Surg. 2010;145(7):690-694.

出血性ショック患者では同種血液製剤の投与が不可避なことがある。同種血輸血には色々な合併症があり、供給不足のため必要量の輸血が困難なこともままあり、製造コストが高いため費用が嵩む。外傷患者の管理において、術中回収式(cell salvage; CS)自己血輸血は費用節減につながる選択肢の一つとなり得ると考えられる。

単一のレベル1外傷センターに収容された患者を対象に遡及的コホート研究を実施し、同種血輸血のみが行われた患者と、同種血輸血に加え術中回収式自己血輸血が行われた患者の転帰を比較した。外傷センター収容6時間後までに開腹、開胸または整形外科手術を受け、術中回収式自己血輸血が行われた患者を対象とした。外傷手術が行われたものの術中回収式自己血輸血は行われた患者コホートを、この対象患者とマッチングした。

2年間に76名の外傷患者に術中回収式自己血輸血が行われた。そのうち47名について、年齢、性別、受傷機転、ISS、術式が同じで、術中回収式自己血輸血が行われなかった患者が見つかった。術中回収式自己血輸血実施群の方が術中回収式自己血輸血非実施群と比べ、術中平均出血量が有意に多かった(1795mL vs 978mL; P<0.001)。入院期間(18日vs 20日)およびICU在室日数(8日vs 8日)は同等であった。一方、術中回収式自己血輸血実施群の方が血液製剤投与に関わる費用が少なかった(1616米ドルvs 2584米ドル;P=0.004)。死亡率は同等であった(13% vs 21%; P=0.56)。

解説
回収式自己血輸血は、同種他家血輸血を減らすのに役立つ方法である。外傷患者を対象としたこの研究では、濃厚赤血球製剤やその他の血液製剤のみを投与するよりも、回収式赤血球輸血を利用する方がコストがかからないという結果が得られた。合併症について、回収式自己血輸血と同種他家血輸血とを比較検討する研究をさらに行う必要がある。

Preoperative Hypoalbuminemia is an Independent Risk Factor for the Development of Surgical Site Infection Following Gastrointestinal Surgery: A Multi-Institutional Study. Ann Surg 2010; 252:325-9

手術部位感染(SSI)は院内感染の16%~18%を占め、総医療費の約18億米ドルを費やす結果となっている。SSIの危険因子として色々な要因が同定されているが、その一つが低栄養である。低アルブミン血症は様々な術後合併症の原因となり得ることが明らかにされているが、SSIとの関係に絞って検討した研究は数少ない。

四か所の異なる施設で行われた消化管手術症例(524例)について、SSIデータベースおよび診療録を用いて遡及的研究を行った。

年齢中央値は66歳、約半数が男性であった。大半(78.2%)がASA PS1または2であった。全体で20%の患者にSSIが発生した。そのうち65.7%が切開部表層、28.6%が切開部深層、5.7%が手術対象臓器の感染であった。年齢、性別、術式、麻酔法および手術時間(3時間以内の場合のみ)は、いずれもSSIとの相関を示さなかった。だが、ASA PS3であると1や2の場合と比べSSIの発生頻度が有意に上昇することが分かった(P=0.03)。緊急(vs 予定)手術および開腹(vs 腹腔鏡)手術もSSI発生頻度の上昇要因であった(それぞれP=0.003、P=0.004)。低アルブミン血症(30mg/dL未満)はSSIの独立した危険因子であることが分かった(RR=5.68)。切開部位表層感染症例の46.4%、切開部位深部感染症例の83.3%、手術対象臓器感染症例の80%を、血清アルブミン濃度30mg/dL未満の症例が占めた。

解説
手術部位感染は主要な術後合併症である。手術部位感染の危険因子は緊急手術、長時間手術および基礎疾患などである。本研究で、低アルブミン血症によって創部感染のリスクが増大することが明らかになった。低アルブミン血症の患者では、創部感染の予防に特段の注意を払うべきである。

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