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外傷と第Ⅶ因子~はじめに [critical care]

Results of the CONTROL Trial: Efficacy and Safety of Recombinant Activated Factor VII in the Management of Refractory Traumatic Hemorrhage

J Trauma 2010年9月号より

一年間に500万人以上が外傷で死ぬ。米国では外傷による死者数は年間174000名にのぼり、およそ三分の一は出血死である。出血によってショックに陥り受傷後早期に死亡することもあれば、出血性ショックを契機に発生した臓器不全が死因となることもある。したがって、出血を迅速に制御することは外傷治療の一番の眼目である。

外傷による出血の制御には、手術や血管内治療が必要なことが多い。しかし、出血量および組織損傷が甚大な場合は、急性凝固能障害が起こり重症疾患や死亡の危険性が著しく高くなる。外傷による凝固能障害そのものによっても大量出血やショック死が起こりうるし、術野の妨げになり主要な出血部位の制御に手間取るという事態も考えられる。したがって、凝固能障害による出血によって、アシドーシス、低体温そして凝固能障害の一層の進行という「地獄のサイクル」が発動し患者が死亡するおそれがある。さらに、凝固能障害が発生すると、ショックの遷延や大量輸血による免疫能低下などにより、敗血症や臓器不全のリスクが増大する可能性がある。

外傷患者における凝固能障害についてはまだ十分に解明は進んでいないが、血液製剤を投与し凝固能検査の結果が「正常」に戻るようにすることが治療の主体である。だから、外傷後の凝固能障害による出血を減少させる薬剤があれば、出血の直接的な制御を図る際の重要な脇役となりうると考えられる。遺伝子組み換え活性化第Ⅶ因子(rFⅦa, NovoSeven, Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark)は、傷害や虚血のある部位の血管内皮上に発現する組織因子があると凝血塊の形成を促すという生理学的作用を持つ。また、活性化血小板に直接結合し、トロンビンバーストを増強し安定した止血栓の形成を促すという薬理学的作用もある。遺伝子組み換え活性化第Ⅶ因子の適応として認められているのは、インヒビターを持つ血友病患者に対する使用であるが、外傷患者における凝固能障害の管理の補助療法として効果があるというまことしやかな話が流布し、血友病患者以外にも広く使用されるようになってきている。外傷患者を対象とした大規模前向き第2相試験では、受傷の48時間後まで生存した患者においてはrFⅦaの投与が出血量減少につながり、血栓性合併症の増加は認められないという結果が得られている。これを受けて行われた第3相試験に当たるCONTROL試験は、重症外傷により危機的出血を呈する患者を対象としてrFⅦaの評価を行った。本試験では、出血による死亡、輸血量および臓器不全の抑止効果および安全性の検証を行った。

教訓 遺伝子組み換え活性化第Ⅶ因子(rFⅦa)は、傷害や虚血のある部位の血管内皮上に発現する組織因子があると凝血塊の形成を促します。また、活性化血小板に直接結合し、トロンビンバーストを増強し安定した止血栓の形成を促します。
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