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集中治療文献レビュー 2010年11月② [critical care]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年11月号より

Association between clinical examination and outcome after cardiac arrest. Resuscitation 2010;81:1128-32

心停止後の予後を判定する手法のうち神経学的臨床所見が重要視されているが、新しい関連データは取り入れられていない。心停止後の昏睡患者における従来の神経学的評価項目(対光反射、角膜反射および運動反応)と生存との相関を評価するため、連続症例のカルテを遡及的に調査した。さらに、本研究では低体温療法がこれらの神経学的評価項目に及ぼす影響についても調査した。

4年間272名の患者の、病院到着時、心停止24時間後および72時間後の神経学的所見(GCS)をカルテを用いて調査した。対象患者の平均年齢は61歳で、男性が過半を占め(57%)、院外心停止が多かった(59%)。全体では33%が生存し、転帰が良好であったのは20%であった。心停止24時間後または72時間後のGCS 運動スコアが3点未満であっても、生存退院し転帰が良好である症例もあった。低体温療法を行っても転帰と臨床所見の相関に変化は生じなかった。

解説
この遡及的研究では、院外心停止または院内心停止の24時間および72時間後の臨床所見が予後診断に役立つことが強調されている。本研究の知見から、心停止の予後診断スコアを構築する際に臨床所見が有用であると考えられる。

Effects of tranexamic acid on death, vascular occlusive events, and blood transfusion in trauma patients with significant haemorrhage (CRASH-2): a randomised, placebo-controlled trial. Lancet 2010;376:23-32

出血は外傷後の院内死亡の主因であり、また、多臓器不全の死因ともなり得る。化学的合成物質であるトラネキサム酸には線溶を阻害する作用があり、重度の血管損傷により過度の止血反応が生じた患者における出血量を低減することができる可能性がある。一編の体系的総説で予定手術患者におけるトラネキサム酸の有用性が示されているが、外傷患者における効能については不明である。

CRASH-2 (the Clinical Randomisation of an Antifibrinolytic in Significant Hemorrhage 2)試験は、重篤な出血を呈するか、または受傷後8時間以内で出血のリスクが大きいと判断される成人外傷患者を対象とした多施設偽薬比較対照試験である。患者にはトラネキサム酸(10,093名;初回投与は10分で1g、その後1gを8時間かけて投与)または偽薬(10,114名)が投与された。大多数が男性で(84%)、平均年齢は34歳であり、鈍的外傷症例が多かった(68%)。全死因死亡率は、トラネキサム酸群の方が有意に低かった(14.5% vs 16.0%; P=0.035)。出血関連死もトラネキサム酸群の方が有意に少なかった(4.9% vs 5.7%; P=0.0077)。多臓器不全、頭部外傷もまたは血管閉塞に起因する死亡については、二群間に差は認められなかった。

解説
この多施設無作為化偽薬比較対照試験では、トラネキサム酸群の方が大量出血を伴う外傷患者の28日後死亡率が低いことが明らかになった。この研究で得られた知見を踏まえ、受傷後8時間以内の外傷患者で出血が認められる場合は、トラネキサム酸の使用を考慮すべきである。

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