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集中治療文献レビュー 2010年11月① [critical care]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年11月号より

Delirium as a predictor of long-term cognitive impairment in survivors of critical illness. Crit Care Med 2010; 38:1513-20

重症疾患で人工呼吸管理を含む集中治療が奏功し生存した患者の多くに、深刻な認知機能障害が発生する。しかし、このような患者における認知機能障害発生に関わる特異的な危険因子や予測因子は、よく分かっていない。

この前向きコホート研究(Awakening and Breathing Controlled trialの一部)では、内科系ICUに入室し人工呼吸管理を12時間以上行われた患者を対象に、ICU入室1年後まで認知機能の変化を評価した。

対象となった126名のうち解析ができたのは77名(78%)に止まった。残りは死亡や追跡調査からの脱落によって解析ができなかった。年齢の中央値は61歳で、多くが重症敗血症/ARDS(51%)または心筋梗塞/鬱血性心不全(20%)によるICU入室例であった。ICU在室中に84%が譫妄を発症した。生存者全体で71%において1年後の時点で認知機能の低下が認められた。譫妄のあった期間は認知機能悪化の独立予測因子であったが、人工呼吸期間との相関は認められなかった。

解説
重症疾患罹患中に発生する急性認知機能障害(譫妄)がICU退室後数ヶ月もしくはそれ以上の期間続く慢性認知機能障害とに強い相関があることが分かった。明らかな原因があり治療によって改善される譫妄や(代謝性疾患、敗血症、薬物中毒、薬物離脱症候群など)、原因不明の譫妄も含めたあらゆる種別の譫妄について、同じような予後予測能があるのかどうかは不明である。譫妄を減らす手法によって慢性認知機能障害の発生率が低下するかどうかも分かっていない。

Association of Corticosteroid Dose and Route of Administration With Risk of Treatment Failure in Acute Exacerbation of Chronic Obstructive Pulmonary Disease. JAMA 2010;303:2359-67

米国のCOPD成人患者の6%以上において、副腎皮質ステロイドの全身投与が呼吸機能の改善、治療失敗リスクの低下および入院期間の短縮といった効果につながることが示されている。しかし、最良の投与経路および至適投与量については、はっきりしていない。

多施設遡及的薬剤疫学コホート研究を行い、少量ステロイド経口投与と高用量ステロイド経静脈投与のいずれかが行われた患者を対象に、転帰を比較した。Premier社Perspectiveデータベースに登録されている414か所の病院にCOPDのためICU以外の部門に入院した患者からデータを1年にわたって収集した。第2病日以降の人工呼吸管理開始、院内死亡率もしくは退院後30日以内のCOPD急性増悪による再入院から成る複合評価項目を治療の失敗と定義した。

対象患者(79985名)の年齢の中央値は69歳で、過半が女性であり(61%)、他の基礎疾患として多かった者は高血圧であった(60%)。大多数の患者(92%)に、高用量ステロイドの経静脈投与が行われていた。少量ステロイド経口投与が行われた患者群の方が白人が少なく、個人健康保険に加入していない者が多く、基礎疾患の数が多い傾向が認められた。全体では、高用量ステロイド経静脈投与群の1.4%、少量ステロイド経口投与1.0%が入院中に死亡した。治療失敗の複合評価項目に合致した患者の割合は同等であった(それぞれ10.9%、10.3%)。今回の解析では、副腎皮質ステロイド投与量と治療失敗リスクのあいだに有意な相関は認められなかった。

解説
この大規模研究では、ICU以外の部門に入院したCOPD増悪患者が対象となった。少量ステロイド経口投与が、高用量ステロイド経静脈投与と比べ転帰を悪化させるわけではなかった。この研究結果は、高用量ステロイド経静脈投与によるリスクを減らすのに有用であると考えられる。ただし、前向き臨床試験を行い、本研究で得られた知見を確認する必要がある。

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