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麻酔文献レビュー2010年10月③ [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年10月号より

Target Ranges of Oxygen Saturation in Extremely Preterm Infants. N Engl J Med. 2010; 362: 959-69

早産児では、酸素毒性が死亡や網膜症などのリスク増大の原因となり得る。しかし、網膜症の危険性を最大限回避しつつも、その他の有害事象が発生するリスクが増大しないようにするには、どれぐらいの酸素飽和度を目標とすればいいのかは、今までの研究では結果にばらつきが大きく決定的な答えは未だ得られていない。

ここに紹介したSUPPORT(Surfactant, Positive Pressure, and Oxygenation Randomized Trial)は、2×2要因配置無作為化試験である。在胎24週0日から27週6日の間に出生した早産時を対象とし、目標酸素飽和度85-89%(654名)と91-95%(662名)のいずれが有益であるかの比較が行われた。本研究では、重症未熟児網膜症(限界域網膜症、眼科手術の適応、ベバシズマブ投与のいずれかに該当する症例)、死亡退院もしくはその両者の複合転帰が主要転帰として設定された。さらに対象患者全員が、CPAP群または気管挿管+サーファクタント投与群のいずれかに無作為に割り当てられた。

重症網膜症または死亡の発生率は、低酸素飽和度群と高酸素飽和度群とで同等であった(それぞれ28.3%、32.1%)。目標酸素飽和度と換気法とのあいだの有意な相関は認められなかった。低酸素飽和度群の方が重症網膜症の発生率は有意に低いものの(8.6% vs. 17.9%; 相対危険度0.52; P<0.001)、死亡退院率は高酸素飽和度群より有意に高かった(19.9% vs. 16.2%; 相対危険度1.27; P=0.04)。その他の有害事象の発生頻度は両群同等であった。

解説
未熟児の新生児期管理において網膜症は長きにわたり問題とされている。麻酔科医および新生児専門医は、酸素分圧を低くすることによって網膜症の発生を防ごうと努力してきた。しかし、この研究では酸素飽和度が低いと死亡率が上昇することが示された。

Effect of Bar-Code Technology on the Safety of Medication Administration. N Engl J Med 2010; 362: 1698-707.

薬剤使用に伴う有害事象の25%以上は回避可能であると考えられている。コンピュータによる処方入力やバーコードを用いた薬剤識別などの情報技術を導入することによって、重大な薬剤誤投与の発生頻度が低下することが明らかにされている。

電子化された薬剤投与方式(eMAR)の導入が誤投与発生頻度の低下につながるかどうかを評価することを目的とした、前向き前後比較疑似実験研究が行われた。735床を擁する3次大学病院一施設においてバーコードを利用したeMAR導入前後9ヶ月間の誤投与発生率を算出した。この病院では同期間中に590万回分の薬剤が投与された。臨床医2名が、誤投与症例の一つ一つにつき患者に害を及ぼす可能性を評価・分類した。

薬剤投与14041回および処方内容転記3082回の内訳について調べてみたところ、内科、外科、集中治療部からのものがそれぞれ30%、52%、17%を占めていた。バーコードを利用したeMARの導入によって、投与時刻以外の誤投薬回数が41.4%減少した(P<0.001)。eMARを使用した場合と使用しなかった場合それぞれの典型的な過誤内容は、経口投与と経管投与の間違い(4.4% vs. 3.6%)、処方指示内容の間違い(2.9% vs. 0.6%)、投与量の間違い(2.0% vs. 1.1%)および指示された薬剤と異なる薬剤の投与(1.0% vs. 0.4%)であった。内科系病棟より外科系病棟および集中治療部の方が誤投薬発生頻度が高かった。有害事象が起こる可能性のある誤投薬(投与時刻間違い以外の誤投薬)の発生率は、バーコードeMAR導入によって50.8%減少した(P<0.001)。投与時刻間違いは27.3%減少した(P<0.001)。eMAR導入前の処方内容転記間違い発生率は6.1%であったが、導入後には根絶された。

解説
患者はもとより、医療従事者および社会全体が患者の安全に関心を抱いている。誤投薬は未だに困った問題であり、画期的な解決策が求められている。この研究では、処方された薬剤と、投与対象患者および実際に投与しようとする薬剤とを照合するバーコードシステムによって誤投薬が減ることが明らかになった。今後、全てではないにせよ多くの手術室で、このような投薬方式が活用されるようになるであろう。

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