SSブログ

麻酔文献レビュー2010年10月① [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年10月号より

Elective Thoracic Aortic Aneurysm Surgery: Better Outcomes from High-Volume Centers. J Am Coll Surg; 210: 855-60.

複雑な難しい手術については、実施症例の多い施設の方が少ない施設と比べて合併症発生率および死亡率が低いことが明らかにされている。しかし、胸部大動脈瘤の手術に関しては、症例数と転帰との相関が今までに検証されたことがない。

この遡及的研究では、ヴァージニア心臓手術改善データベース(Virginia Cardiac Surgery Quality Initiative database)を基に3年間のデータを集計した。このデータベースは、13種の心臓外科手術について17病院から集められたデータから構築されており、ヴァージニア州で行われる開心術症例のうち99%以上についての情報が集積されている。調査担当者は、各施設の症例数については関知しない状態で、胸部大動脈瘤切除術の実施症例数が少ない施設(40例未満)と実施症例数が多い施設(80例を超える)の周術期死亡率を比較検討した(図参照)。

解説
州全域を対象としたデータベースを基に、胸部大動脈瘤の予定手術の転帰が検討された。その結果、症例数が少ない病院より多い病院の方が、死亡率、腎不全発生率、長期人工呼吸実施率および入院費用が少ないことが明らかになった。同様の研究の結果を裏付けるものではあるが、症例数の多寡は恣意的に決められたものである。

Everolimus-Eluting versus Paclitaxel-Eluting Stents in Coronary Artery Disease. N Engl J Med 2010; 362: 1633-74.

Second-Generation Drug-Eluting Coronary Stents. N Engl J Med 2010; 362: 172830.

ベアメタルステントと比較し、薬剤溶出ステントは再狭窄率が低く優れた有効性を誇る。しかし、数多くの研究が行われてきたにも関わらず、パクリタキセル溶出ステントとエベロリムス溶出ステントのどちらが安全性および有効性において勝っているかは未だ明らかにされていない。

この研究は、前向き多施設無作為化単盲検実薬対照試験(SPIRIT Ⅳ)であり、エベロリムス溶出ステントとパクリタキセル溶出ステントが比較された。本試験は米国に所在する66施設で実施され、このうちのいずれかの施設でPCIが行われた3687名の患者が対象となった。経過観察のための冠動脈造影はルーチーンには行われなかった。

薬物溶出ステント留置1年後に追跡評価を行ったところ(97.9%の症例で実施)、PCIの目標病変における異常所見発生率は、エベロリムス溶出ステント群の方がパクリタキセル溶出ステント群より低かった(図参照)。

解説
エベロリムスを用いた第二世代の薬物溶出ステントは、第一世代のパクリタキセル溶出ステントと比べ、薬物送達の機能が向上しステントの構造も進歩している。この多施設試験は米国で行われ、対象患者数は3687名にのぼった。再狭窄とPCIの再実施をまとめて目標病変における異常所見として評価したところ、エベロリムス溶出ステント群の方が優れているという結果が得られた。だが、心臓死発生率については同等であった。また、糖尿病患者の各種転帰については、いずれにおいてもエベロリムス群とパクリタキセル群とのあいだに臨床的有益性の差は認められなかった。本論文についての編者解説でも指摘されている通り、エベロリムスとパクリタキセルの違いについては、さらに研究を重ねる必要がある。

コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。