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VAPの新しい課題と論点~人工鼻 [critical care]

New Issues and Controversies in the Prevention of Ventilator-associated Pneumonia

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年10月1日号より

一部のガイドラインでしか推奨されていない方法

熱湿度交換器(HME; 人工鼻)または加温加湿器(HHs)

Kolaらは計1378名を対象とした9編の試験についてのメタ分析を行い、人工鼻の使用によってVAP発生率が低下することを明らかにした(相対危険度0.7; 95%CI, 0.50-0.94)。しかし、人工鼻と比べ加温加湿器の方がVAP発生率が有意に低いことを示したCohenらおよびBlinらが行った計2編の非無作為化研究は、このメタ分析には含まれていない。

人工呼吸を5日以上要する患者に加温加湿器を使用した場合、VAP発生率の有意な低下は認められないという結果を報告した無作為化試験2編、VAP発生率の有意な低下が認められるとした無作為化試験1編(15.7 vs 39.6%; P=0.006)の計3編の研究が、Kolaらのメタ分析に引き続き発表された。

その後Siemposらが行ったメタ分析では、計2580名を対象とした13編の無作為化比較対照試験について解析が行われた。その結果、人工鼻と加温加湿器のあいだにVAPおよび気道閉塞の発生率、ICU死亡率、ICU滞在期間および人工呼吸期間の有意差は認められなかった。しかし、いずれの試験においても人工鼻は加温加湿器より安価であった。人工鼻には費用削減という利点があるため、低体温、無気肺、粘稠痰または血痰などの禁忌がない限り、人工鼻の使用は「一考に値する」とする。

まとめ

極薄紡錘形カフ付き気管チューブおよび抗菌物質被覆気管チューブを用いるとVAPのリスクが低減すると我々は確信している。以上のような工夫を講じた気管チューブにSSD機能を搭載すれば、より高いVAP予防効果が得られ役に立つであろう。

さらに、人工呼吸期間が7日以上におよぶと予想される患者においては早期気管切開を考慮すべきである。早期気管切開によって、人工呼吸期間とICU滞在期間の短縮、死亡率低下、患者の快適性の向上といった効果が得られる。しかし、今のところ早期気管切開によってVAP発生率が低下するという報告はまだない。人工鼻には費用削減という利点がある。禁忌がなければ、人工呼吸患者の吸気加湿法として人工鼻の使用を考慮すべきである。

カフ圧持続制御装置、バイオフィルム除去装置、および気管内吸引前の生食注入については、さらに研究を行い有効性を明らかにする必要がある。

VAP発生リスクは人工呼吸期間が延長するほど増大するため、長期にわたり人工呼吸が行われる患者では、以上のような予防策が特に有効性を発揮するものと考えられる。臨床上の意思決定過程では、人工呼吸期間が長期化しそうな患者を見分ける必要があることが指摘されているが、多くの場合、人工呼吸管理を長期に必要とする患者を予め同定することは困難である。したがって、重症患者に人工呼吸を行う場合、全症例において以上のVAP予防策をもれなく適用すればよかろう、とも考えられる。

本レビューで紹介したVAP予防策の多くについて、論じていない問題点がある。費用対効果のデータは不足しているし、各予防策が死亡率、人工呼吸期間および入院期間に及ぼす影響についてのデータは皆無もしくは極わずかである。さらに、一部の文献では特定の限定的な症例が対象とされていたため、その結果を広く一般に敷衍するには差し障りがある。また、標本数が不足している研究もあった。以上を踏まえると、ここに紹介した様々なVAP予防策についての推奨度を確実に決定するには、さらに研究を重ねる必要がある。本レビューに挙げたVAP予防策が、現行のガイドラインでどのように取り扱われているかをTable 1にまとめた。あわせて、新しいエビデンスと我々が今回決定した推奨度もTable 1に掲載した。カナダ集中治療医学会のガイドラインでは、留保なく有効であるとされる場合は推奨、エビデンスが十分に蓄積されていないか、有効性、有害性または費用について重大な疑問が残る場合は推奨しない、というように推奨度が決定されていた。

教訓 低体温、無気肺、粘稠痰または血痰などの禁忌がない限り、人工鼻の使用は一考に値します。
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