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乳酸を指標とする初期治療の効果~結果 [critical care]

Early Lactate-Guided Therapy in Intensive Care Unit Patients

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2010年9月15日号より

結果

患者の登録状況はオンライン補遺中のFigure E1に示した。348名の患者を対象にITT解析を行った。対照群に177名、乳酸値測定群に171名が無作為に割り当てられた。18名において重大なプロトコル違反が発生した(Table E1)。この18名もITT解析の対象とした。Table 1に基準時点における患者特性をまとめた。8時間の治療期間中に16名が死亡した(対照群10名 vs 乳酸値測定群6名)。登録から8~72時間後のあいだに、さらに52名が死亡した(対照群27名 vs 乳酸値測定群25名)。72名はICUを退室し病棟へ収容された(対照群38名 vs 乳酸値測定群41名)。登録72時間後において、201名が依然ICUに在室していた(対照群102名 vs 乳酸値測定群99名)。

治療エンドポイント

従来から広く用いられている標準的な急性期治療目標を満たした患者の割合は、いずれの時点においても両群で同等であった(6時間後の心拍数を除く。対照群の方が6時間後における心拍数目標値を満たした患者の割合が多かった)(Table E2)。2時間で20%以上の乳酸値低下という目標が設定されたのは乳酸値測定群のみであったが、この目標を達成した患者の割合は対照群、乳酸値測定群ともに同等であった。

治療期間およびそれに引き続く観測期間中の、平均乳酸値は両群同等であった(Table 2)。pH、BE、炭酸水素イオン濃度、平均動脈圧、心拍数、中心静脈圧およびヘモグロビン濃度についても、両群同等であった(Table E3)。

治療薬

乳酸値測定群の治療期間中の輸液量は、対照群と比べ有意に多かった(Table 3)。さらに、血管拡張薬を投与された患者の割合は、乳酸値測定群の方が多かった(Table 3、Table E4)。赤血球製剤の投与量は両群同等であった。昇圧薬および強心薬の投与を要した患者の割合は両群同等であった。

人工呼吸(対照群86% vs 乳酸値測定群84%, P=0.76、そのうち非侵襲的人工呼吸は2% vs 2%)、抗菌薬投与(67% vs 61%, P=0.27)、副腎皮質ステロイド投与(45% vs 40%, P=0.38)、ICU入室後の手術(9% vs 6%, P=0.36)、鎮痛薬投与(フェンタニルまたはモルヒネ;58% vs 50%, P=0.13)、鎮静薬投与(ミダゾラム、ロラゼパムまたはプロポフォール;71% vs 71%, P=0.91)、低体温療法(10% vs 6%, P=0.20)およびPCI (1% vs 1%, P=0.96)が行われた患者の割合は、両群同等であった。

観測期間中に血管拡張薬が投与された患者の割合は、乳酸値測定群の方が対照群より多かった(Table 3)。観測期間の輸液量は、乳酸値測定群の方が対照群より少ない傾向が認められた。

死亡率

対照群の患者のうち43.5% (77/177)は生存退院に至らなかった。一方、乳酸値測定群の患者の内33.9% (58/171)は入院中に死亡した(P=0.067, Table 4, Figure 2)。予め決めておいた基準時点における危険因子の有無によって調整したところ、乳酸値を低下させるように設計した治療プロトコルを実施することによって、入院中死亡リスクが有意に低下することが分かった(ハザード比, 0.61; 信頼区間, 0.43-0.87; Table 4, Table E5)。

臓器不全、強心薬、昇圧薬、腎代替療法および入院期間

観測期間における臓器不全の発生(SOFAスコアで評価)は、乳酸値測定群の患者の方が少なかった(Table 5)。乳酸値測定群の方が、人工呼吸(ハザード比,0.72; 95%CI, 0.54-0.98; Figure 3A)および強心薬(ハザード比,0.65; 95%CI, 0.42-1.00; Figure 3B)からの離脱が迅速であった。さらに注目すべきは、乳酸値測定群の患者の方が早期にICUを退室することができた点である(ハザード比,0.65; 95%CI, 0.50-0.85; Figure 4)

昇圧薬投与終了までに要した時間については有意差は認められなかった(ハザード比,0.84; 95%CI, 0.61-1.15; Figure 3C)。腎代替療法についても同様であった(ハザード比,0.56; 95%CI, 0.22-1.43; Figure 3D)。

サブグループ解析および探索的解析

事前に設定したサブグループおよび事後に設定したサブグループについての解析結果をFigure 5に示した。未調整および調整後の主要転帰に関する統計学的有意差を検討するため、2種類の探索的事後解析を実施した。予め作成した院内死亡率についての多変量モデルに相互作用項として年齢またはAPACHEⅡスコアを加えたところ、いずれの場合も変化は認められなかった(年齢×割り当て群 [P=0.74]およびAPACHEⅡスコア×割り当て群[P=0.85])。次に、共変量(開始時点におけるAPACHEⅡスコアおよびSOFAスコア)のデータが逸失した6名の患者を除外して解析したところ、効果量およびP値は当初の解析と同等であった。

教訓 乳酸値を指標とした群の方が、輸液量が多く、血管拡張薬が投与された患者が多かったのですが、乳酸値低下目標を達成した患者の割合は両群同等でした。調整後死亡率は乳酸群の方が有意に低いという結果が得られました。
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