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集中治療文献レビュー2010年9月② [critical care]

Anesthesia Literature Review

Anesthesiology 2010年9月号より

Conventional and chest-compression-only cardiopulmonary resuscitation by bystanders for children who have out-of-hospital cardiac arrests: a prospective, nationwide, population-based cohort study. Lancet 2010; 375: 1347-54

成人の突発的心停止症例では、胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた従来の心肺蘇生(CPR)と、胸骨圧迫のみのCPRのどちらを行っても生存率は同等である。小児心停止症例では、大半の症例において呼吸停止が先行する。したがって、小児心停止には胸骨圧迫のみのCPRよりも従来通りのCPRの方が有効であると考えられている。

本研究は、日本において全国規模で地域集団を対象に行われた前向き観測研究である。小児の院外心停止症例を対象として、神経学的転帰について従来型CPRと胸骨圧迫のみCPRとの比較が行われた。2年にわたり5170名の小児(17歳以下)心停止症例のデータが収集された。

大多数の症例が、非心原性心停止であった(71%)。心原性心停止は残りの29%を占めた。全体の52%には、居合わせた者によるCPRが行われなかった。全体の30%に対し、居合わせた者によって従来型CPRが行われ、17%に対しては胸骨圧迫のみのCPRが行われた。対象症例全体では、一ヶ月後生存率は9.2%、一ヶ月後に神経学的転帰良好であったのは3.2%であった。居合わせた者によってCPRが行われなかった群の転帰が最も不良であった。小児の非心原性心停止症例には、従来型CPRが有効であることが分かった。

解説
この意義深い研究は、胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせて行う従来型CPRが、非心原性と推測される小児院外心停止症例に対する標準的治療であることを改めて堅固に裏付けている。また、胸骨圧迫は、たとえ訓練を受けていない者が行う場合であっても、蘇生の試みを何もしないよりは、はるかに有益であることが痛感される。

Activated protein C and hospital mortality in septic shock: A propensity-matched analysis. Crit Care Med 2010; 38: 1101-7

敗血症の脅威は世界的に増大しつつあり、現行の治療法について、さらに研究を重ねる必要がある。重症敗血症に対する遺伝子組み換えヒト活性化プロテインC (APC)の治療効果を検討する目的で行われた二編の大規模臨床試験は、相反する結果を示すに至った。

臨床の現場におけるAPCの安全性と有効性をさらに詳しく検討するため、2年の歳月を費やし404ヶ所の病院に収容された患者を対象として遡及的コホート研究が行われた。ICU入室後2日以内に抗菌薬と昇圧薬の投与を開始された敗血症患者を対象とした。このうち1576名にAPCが投与されていた。APCが投与されなかった対症例対照として1576名を抽出した。

患者の分布に偏りがあったため、いくつかのサブ解析が行われた。患者および病院に関わる特性および治療法の違いを組み入れた多変量モデルを用いた。APCが投与されなかった患者と比較し、APCが投与された患者では、院内死亡率の相対危険度が17%低かった。治療法および病院についての共変量を考慮した対照コホートを設定して行った二次解析では、死亡率の絶対差は5.9%であった。APC投与による有害事象は、消化管出血(6.8%)、輸血(0.3%)、出血性脳血管障害(0.25%)などであった。

解説
この遡及的研究では、傾向スコアを用いた症例対照による解析が行われた。入院後2日以内にAPCの投与を開始すると、敗血症性ショック患者の院内死亡率が低下することが明らかになった。APCの投与を早期に始めると、敗血症性ショック患者の転帰が本当に改善するのかどうかは、改めて前向き研究を行わなければはっきりとはしない。

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