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CRPが高いほどARDSの転帰は良い~結果① [critical care]

Plasma C-Reactive Protein Levels Are Associated With Improved Outcome in ARDS

CHEST 2009年8月号より

結果

対象患者とCRP値

研究期間中に、ARDSの危険因子があり除外診断基準に合致しない患者1427人をコホートに登録した。そして、このコホートを対象に、ARDS発症の有無について追跡調査を行った。ARDSを発症した患者は418名であった。ARDS発症から48時間以内に登録できなかった症例もあった。その主な理由は、代理人からの同意取得の遅延や研究実施施設外におけるARDS発症であった。計177名から血液検体を採取し、この177名が本研究の被験者となった。入院からARDS発症までの日数の中央値は1日であり四分位範囲(IQR)は2日であった。

Table 2に掲げた人口統計学的因子、慢性疾患、病因および生理学的因子と、APACHEⅢの各項目について、除外基準に当てはまり研究対象から除外された患者と本研究被験者との比較を行った。死亡率は、除外患者と被験者の間で同等であった (40% vs 40%, p =0.99)。人口統計学的因子ならびに生理学的特性に関しても差はなかった(Table 1に全結果を提示)。被験者群の方が除外患者群より肺炎の罹患率が有意に高く(75% vs 61%, p =0.004)、外傷症例の占める割合が有意に低く(4% vs 10%, p =0.02)、コルチコステロイドを投与された患者の割合が有意に多かった(16% vs 8%, p =0.01)。研究の初期段階でコホート登録要件を変更し、コルチコステロイドがすでに投与されている患者を除外しないことにした。

基準時点における対象患者の特性をTable 1に示した。この表のデータは、主要評価項目であるARDS発症60日後生存または死亡によって分けて記載されている。生存者は非生存者にくらべ有意に若く、APACHEⅢスコアで判定される重症度が有意に低かったが、それ以外の項目については両群間に差異はなかった。全死亡率は40%であった。対象患者のCRP血中濃度中央値は155mg/L(IQR, 160 mg/L)であった。

肺炎患者のCRPは、肺炎のなかった患者のCRP値と比べ有意に低値であった(中央値, 137.5 mg/L[IQR, 162.0] vs 中央値, 181.5 mg/L [IQR, 121.0],p =0.01)。しかし、死亡率については、CRP値の高低による有意差は認められなかった(肺炎患者40% vs 肺炎のなかった患者38%, p =0.86)。外傷患者と非外傷患者のあいだで、CRPおよび死亡率に有意差は認められなかった。ただし、この研究では外傷患者の数が少なかった点に留意が必要である。

ARDSの転帰とCRP値

主要評価項目である60日後生存の有無によって患者を区分したところ、CRP値はARDS生存者の方がARDS非生存者に比べ有意に高かった(中央値, 176.5 mg/L [IQR, 173.0] vs 中央値, 133.5 mg/L [IQR, 161.0], p =0.02)(Fig. 1)。CRP値によって患者を分類したところ、CRPが低い区分に該当する患者ほど死亡率が低いという結果が得られ、この相関は統計学的にも有意であった(p=0.02)。以上をFigure 2に図示した。

CRP値による各分類群の60日以上生存可能性をKaplan–Meier曲線で示した(Figure3)。ログランク検定による比較を行ったところ、CRP値が高いほど生存期間が有意に長いことが解った (p=0.005) 。

未調整Cox比例ハザードモデルでは、対数変換したCRP値が大きいほど、60日後死亡ハザードが低いことが明らかになった (ハザード比, 0.8; 95%信頼区間[CI], 0.65-0.98; p =0.03)。共変量調整後のCoxモデルを用いた最終解析結果をTable3に示した。共変量を調整してもなお、CRP値が高いほど死亡ハザード比が低いという相関が認められた。CRPを連続変数として扱わず、CRP値のカットポイントを226 mg/Lとして区分した場合にも、同様の相関が認められた。CRP値がカットポイント以上であると、60日後死亡ハザードが低いという結果が得られた (調整ハザード比, 0.50; 95% CI, 0.26 to 0.98; p =0.04)。統計学的手法によらずこの相関が一貫して認められることを示すため、Cox比例ハザードモデルと同様にロジスティク回帰モデルを構築し、主要評価項目についての解析を再度行った。この解析でも、対数変換したCRP値が高いほど死亡率が低いという有意な相関が認められた(オッズ比, 0.65; 95% CI, 0.42 to 1.00;p=0.05)。いずれのモデルもROC曲線(receiver operating characteristic curve)下面積は同等であった ([ロジスティク解析]c統計値=0.84; 95% CI, 0.73 to 0.94; [Cox比例ハザードモデル]c統計値 =0.79; 95% CI, 0.66 to 0.88)。

教訓 ARDS生存者の方がARDS非生存者に比べCRPが有意に高く、CRPが高いほどARDS患者の生存期間は長いことが分かりました。
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