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急性肺塞栓~長期管理 [critical care]

Acute Pulmonary Embolism

NEJM(Published at www.nejm.org June 30, 2010)

長期管理

急性肺塞栓患者には血栓塞栓症の再発リスクがある。再発は、またしても肺塞栓であることが多い。抗凝固療法が継続実施されている患者における肺塞栓の再発リスクは、年間1%未満である。一方、抗凝固療法中止後の肺塞栓再発リスクは、年間2~10%である。再発の危険因子は、男性、高齢および特発性または誘因のない肺塞栓(即ち、静脈血栓塞栓症に関する特段の危険因子がない肺塞栓)である。特に誘因のない肺塞栓は、肺塞栓症例全体の50%もの割合を占める。癌患者の肺塞栓再発リスクは非常に高い。内科系疾患によるベッド上安静、大手術、または外傷などの一時的に発生する危険因子により初回の肺塞栓が発症した患者における再発リスクは年間約3%である。

長期抗凝固療法を行う際、その実施期間は、ビタミンK拮抗薬の投与を中止した場合の再発リスクの多寡、抗凝固療法の実施による出血性合併症のリスクおよび患者の希望を総合的に判断して決める。一時的な(可逆性の)危険因子を背景に発症した肺塞栓の患者では、ビタミンK拮抗薬の投与を3ヶ月間継続する。特に誘因のない肺塞栓、癌患者の肺塞栓、および特に誘因のない肺塞栓の再発例では、予め投与期間を決めず抗凝固療法を継続し、抗凝固療法の利害得失を定期的に再評価する。急性肺塞栓発症後、当初3~6ヶ月間は従来の標準的ワーファリン療法(INR目標値 2.0~3.0)が推奨される。その後は、必要に応じて少量ワーファリン療法(INR目標値 1.5~1.9)を行う。癌患者および妊婦に対しては、ワーファリンではなく低分子量ヘパリンを用いる。ワーファリンよりも抗凝固作用を正確に予測することができ、他の薬物との相互作用が少ない新しい抗凝固薬に関して、静脈血栓塞栓症の治療薬としての有効性を検討する臨床研究が現在進行中である(NCT00643201, NCT00633893, NCT00986154, NCT00439777およびNCT00680186)。こうした新しい抗凝固薬は、凝固能の検査を行い抗凝固作用のモニタリングを行う必要がない。経口抗トロンビン薬のダビガトランは、決められた量を投与すればよい薬剤である。本薬剤は、静脈血栓塞栓症の治療薬として、ワーファリンと同等の安全性と有効性を発揮することが明らかにされている。

急性肺塞栓発症後は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症の評価を行わなければならない。急性肺塞栓発症2年後における慢性血栓塞栓性肺高血圧症の発生頻度は、0.8~3.8%である。

教訓 抗凝固療法が継続実施されている患者における肺塞栓の再発リスクは、年間1%未満です。一方、抗凝固療法中止後の肺塞栓再発リスクは、年間2~10%です。内科系疾患によるベッド上安静、大手術、または外傷などの一時的に発生する危険因子により初回の肺塞栓が発症した患者における再発リスクは年間約3%であす。
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