SSブログ

急性肺塞栓~診断① [critical care]

Acute Pulmonary Embolism

NEJM(Published at www.nejm.org June 30, 2010)

急性肺塞栓の臨床像は幅広く、軽度の呼吸困難にとどまることもあれば、低血圧が遷延することやショックにまで至ることもある。無症状の肺塞栓も存在し、他の目的で行われた画像診断によってたまたま見つかることもある。急性肺塞栓の致死率は臨床症状の程度によって異なり、重症例では約60%、軽症例では1%未満である。肺塞栓に対する治療の根幹は抗凝固療法である。転帰不良の見込みの多寡にもよるが、多くはICU入室の上、血栓溶解やカテーテルまたは手術による血栓除去が必要となる。しかし、早期退院や在宅治療が可能な症例もある。本レビューでは、臨床像および予測される転帰に応じた適切な診断手順と治療について述べる。

診断

他にこれといった原因の見当たらない呼吸困難、胸痛または遷延する低血圧が新たに出現したり、増悪傾向を呈したりする患者では、必ず肺塞栓を疑うべきである。しかし、客観的検査によって肺塞栓の診断が確定されるのは、このような臨床像を呈する患者のうち20%を占めるに過ぎない。国によってはこの割合がさらに低い。例えば米国では、前述のような症状が少しでも見られれば肺塞栓を疑い詳しい検査を行うので、診断が確定される患者の割合がいきおい低くなるのである。患者の血行動態が安定しているか不安定であるかということを中心に、臨床像の重症度に応じて、肺塞栓の診断に必要な検査の種類を選択すべきである。

血行動態が安定している場合、肺塞栓の診断は、臨床的可能性の評価にはじまり、Dダイマー測定、その次に(必要であれば)多列検出器型CTまたは換気血流スキャン、と順を追って行う(Fig. 1)。肺塞栓の可能性が高いと臨床的に判断される患者ではDダイマー検査が有用である。ガン患者、妊婦、入院患者および高齢患者では、Dダイマー上昇による肺塞栓診断の特異度は低い。入院患者において肺塞栓が疑われる場合は、大半の症例ではDダイマー検査を行うべきではない。臨床像および危険因子から肺塞栓の臨床的可能性を評価する際は、経験に基づいた臨床的判断もしくは誰にでも分かるように明示された臨床的決定要項によって事を進める。そして、肺塞栓の可能性の大きさに応じて患者を分類する。臨床的可能性によって診断の進め方や診断結果の解釈の仕方が決まる。

Figure 1 肺塞栓の診断手順
肺塞栓の臨床的可能性の評価は、臨床的判断もしくはWellsスコアや改訂ジュネーブスコアを用いた臨床診断に基づいて行う。ショック状態や収縮期血圧90mmHg未満または平時より40mmHg以上の血圧低下が15分以上続く場合を、血行動態が不安定であるとする(新規の不整脈、血管内容量低下および敗血症の場合を除く)。多列検出器型CTが利用できない状況や、腎不全または造影剤アレルギーの患者では、換気血流スキャンを行う。肺塞栓の臨床的可能性が高く、Dダイマーが上昇している症例で、多列検出器型CTで肺塞栓の所見が認められない場合は、下肢静脈超音波検査を行う。右室不全があり状態が悪い患者では、多列検出器型CTの撮影を行わずに血栓溶解療法を行ってもよい。改善が認められず治療方針の変更が必要であるという疑いが残る場合は、患者の状態が安定してから多列検出器型CTを実施する。経皮的血栓除去の適応があると考えられる患者では、右室不全所見の確認の上、経皮的血栓除去に先立ち肺血管造影を行い肺塞栓の確定診断を下してもよい。

教訓 他にこれといった原因の見当たらない呼吸困難、胸痛または遷延する低血圧が認められる患者のうち肺塞栓確定診断例は20%を占めます。重症例の死亡率は約60%です。
コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。