SSブログ

麻酔文献レビュー2010年6月① [anesthesiology]

Anesthesia Literature Review:Perioperative Medicine

Anesthesiology 2010年6月号より

Outcomes after Internal versus External Tocodynamometry for Monitoring Labor

N Engl J Med.2010 Jan 28;362(4):306-13.

子宮収縮のモニタリングを行う場合、状況によっては外測法より内測法の方が推奨される。また、外測法よりも内測法の方が正確に子宮収縮を評価できると考えられている。しかし、子宮収縮の測定法の違いが、帝王切開/器械分娩率や胎児仮死発生率に及ぼす影響については知られていない。

本研究は、オランダに所在する6ヶ所の病院で行われた多施設無作為化比較対照試験である。陣痛誘発または陣痛促進が必要な妊婦において子宮収縮を外測法もしくは内測法によって監視し、帝王切開/器械分娩率を比較した。

対象女性(1456名)は、内測法(734名)または外測法(722名)に無作為に割り当てられた。帝王切開/器械分娩率については、内測法(31.3%)と外測法(29.6%)とのあいだに差は認められなかった(P<0.50; 内測法の相対危険度=1.1)。鎮痛手段の実施率についても差はなかった(硬膜外鎮痛法, 39.4 vs. 38.0%; モルヒネ, 16.1 vs 16.6%)。Apgarスコアなどの新生児転帰についても、いずれの時点においても両法のあいだに差は見られなかった。子宮内圧測定用カテーテルの使用による(新生児または母体の)合併症または死亡症例はなかった。

解説
陣痛誘発または陣痛促進の実施中に内測法または外測法による子宮収縮を行ったところ、帝王切開/器械分娩率はおよそ30%であった。測定法による差はなかった。内測法によって子宮収縮を測定しても、外測法では得られない情報が得られて患者管理に役立つということはなかった。鎮痛法は本研究の主要な評価対象ではなかったものの本研究で得られたデータを踏まえると、硬膜外鎮痛法の適応の有無を決める際に、子宮収縮の計測法の種類を考慮すべきではないと考えられる。

Preventing Surgical-Site Infections in Nasal Carriers of Staphylococcus aureus

N Engl J Med.2010 Jan 7;362(1):9-17

鼻腔内に黄色ブドウ球菌が定着していると、医療関連黄色ブドウ球菌感染の危険性が6倍に上昇する。ムピロシン鼻腔内塗布による鼻腔内または鼻腔以外の黄色ブドウ球菌の除菌を試みた研究が、様々な母集団を対象として行われてきたが、その結果は錯綜している。本研究では、入院時における黄色ブドウ球菌の鼻腔および皮膚定着の有無についての検査と黄色ブドウ球菌の除菌によって、黄色ブドウ球菌による院内感染症を防ぐことができるかどうかが検証された。

本研究は、無作為化二重盲検偽薬対照多施設試験であり、内科または外科病棟に入院した患者についてリアルタイムPCR法により黄色ブドウ球菌定着の有無を調べた。その後、ムピロシン軟膏鼻腔内塗布およびクロルヘキシジン石鹸使用群またはプラセボ軟膏鼻腔内塗布およびプラセボ石鹸使用群のいずれかに対象患者を無作為に割り当てた。

2年間で計6774名の患者について入院時細菌検査を行った。1251名から採取した鼻腔擦過検体1270件から黄色ブドウ球菌が検出された。すべてメチシリンおよびムピロシン感受性であった。黄色ブドウ球菌が検出された1251名のうち917名がITT解析の対象となった。そのうち808名(88.1%)に手術が行われた。

黄色ブドウ球菌感染発生率は、ムピロシン鼻腔内塗布/クロルヘキシジン石鹸使用群の方がプラセボ群より低かった(3.4% vs. 7.7%; 相対危険度0.42)。外科系患者と内科系患者のあいだで転帰の差は認められなかった。深部手術部位感染に対する治療効果が最も顕著に認められた(治療群0.9% vs プラセボ群16%; 相対危険度0.21)。治療群と比べプラセボ群の方が、院内感染発症までの期間が有意に短く(P=0.005)、入院期間が有意に長かった(P=0.04)。治療群におけるムピロシンやクロルヘキシジンによる有害事象は、短期間の鼻や皮膚の刺激症状のみであった。

解説
PCR法により黄色ブドウ球菌の鼻腔内定着が判明した患者に対し、ムピロシン軟膏の鼻腔内塗布とクロルヘキシジン石鹸による皮膚洗浄を行ったところ黄色ブドウ球菌による院内感染の発生リスクが低下した。入院期間も2日短縮した。PCR法を利用すると迅速に結果が得られるため、黄色ブドウ球菌定着があれば入院後直ちに除菌を開始することができる。その結果、黄色ブドウ球菌による院内感染を減らすことにつながると考えられる。

コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。