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無症状の左室機能低下がある患者の術後転帰~はじめに [anesthesiology]

Prognostic Implications of Asymptomatic Left Ventricular Dysfunction in Patients Undergoing Vascular Surgery

Anesthesiology 2010年6月号より

全世界で年間およそ100万人の成人が非心臓手術を受けている。2020年までにその人数は25%増加すると予測されている。非心臓手術の中でも血管外科手術は、周術期心血管系有害事象の危険性が特に高い。非心臓手術後の心血管系有害事象に関わる危険因子のうち最も重大なものは虚血性心疾患であることが知られているが、症状を伴う心不全も虚血性心疾患と匹敵する危険因子であることが複数の研究で明らかにされている。一般人口における有症状心不全の有病率は約2~3%と概算されている。年齢が進むにつれ有病率は上昇し、70代および80代になるとおよそ10%~20%に達すると考えられている。心不全とは臨床的な症候群をあらわす用語であるが、左室機能低下は左室の機械的特性の障害を意味する。無症状左室機能低下と有症状心不全の有病率は同等であると考えられている。

最新のACC/AHAおよび欧州循環器学会の周術期ガイドラインではいずれも、有症状心不全が術後転帰不良を予測する因子であることが銘記されている。しかし、無症状の左室機能低下がどのように予後を左右するのかは不明である。ACC/AHAの周術期ガイドラインでは、左室機能の評価は術前の必須検査には含まれていない(Class Ⅲ、エビデンスレベルC)。さらに、欧州循環器学会周術期ガイドラインでも、無症状の患者に対する安静時心エコーによる左室機能評価の実施は推奨されていない(Class Ⅲ、エビデンスレベルC)。

本研究では、開腹血管手術または血管内手術を受ける患者を対象としルーチーンで術前に心エコー検査を行い、他の心機能異常を伴わない左室拡張障害または無症状の左室収縮障害が術後の予後に及ぼす影響を検討した。

教訓 無症状の左室機能低下がある場合の術後転帰はよく分かっていません。現行のガイドラインでは術前にルーチーンで心エコーを行うことは推奨されていません。


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