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グラム陰性菌による院内感染~治療① [critical care]

Hospital-Acquired Infections Due to Gram-Negative Bacteria

NEJM 2010年5月13日号より

治療の選択肢

経験的先行投与に用いる抗菌薬に関する自院の薬剤感受性状況を知ることは死活的に重要である。院内感染に対する経験的先行治療についての推奨事項および薬剤耐性面無陰性菌による感染症の根本治療については、それぞれTable 4および5に示した。

ポリミキシン系薬(コリスチンおよびポリミキシンB)は既に姿を消した古い薬であったが、近年再び復活し使用されるようになり、注目を集めている。ポリミキシン系薬は1940年代後半に発見された。グラム陰性菌の細胞壁外膜の構成成分であるリポ多糖に対して作用する。ポリミキシン系薬に自然耐性を示す細菌は、セラチア、プロテウス、Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepaciaおよびフラボバクテリウムである。ポリミキシン系薬の使用が憂慮されるようになった原因は腎毒性であり、その後新しい抗菌薬が続々と出現し急速に姿を消した。しかし、カルバペネム耐性菌、特に緑膿菌、A. baumanniiおよびカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌に対する重要な選択肢としてポリミキシン系薬が再び脚光を浴びている(Table 4)。ポリミキシン系薬の投与量の決定は依然難しい問題である。なぜなら、現代の我々が当たり前だと考えるような厳密な新薬開発過程をポリミキシン系薬は経たことがないからである。in vitro研究ではコリスチンの抗菌活性は最高血中濃度に依存することが示されているので、一日一回投与にすると最も有効性が得られると考えられる。しかし動物実験では、一日一回投与だとコリスチン耐性菌の選択、細菌の再増殖および毒性増大が認められることが明らかにされている。したがって、現時点では一日2~4回の分割投与が推奨される。

Table 4 院内感染を引き起こすグラム陰性菌に対して推奨される経験的先行治療
*経験的先行治療ではブドウ球菌もしくはレジオネラも想定して抗菌薬を選択しなければならない。本論文ではこれらの細菌への対応については記していない。また、本表では腎機能が正常な成人患者に対する投与量を示した。

院内肺炎(VAPおよび医療関連肺炎を含む)

肺炎発生前の入院期間5日未満(多剤耐性菌感染の危険因子がない場合)

以下のいずれか一つを選択:セフトリアキソン 1gを24時間ごとに静脈内投与; アンピシリン/スルバクタム3gを6時間ごとに静脈内投与;レボフロキサシン 750mgを24時間ごとに内服または静脈内投与;モキシフロキサシン 400mgを24時間ごとに内服または静脈内投与;エルタペネム 1gを24時間ごとに静脈内投与

肺炎発生前の入院期間5日以上または医療関連肺炎

以下の抗緑膿菌βラクタム薬のうち一つを選択:セフェピム2gを12時間ごとに静脈内投与;セフタジジム2gを8時間ごとに静脈内投与;ピペラシリン/タゾバクタム4.5gを6~8時間おきに静脈内投与;チカルシリン/クラブラン酸3.1gを6時間おきに静脈内投与;メロペネム1~2gを8時間ごとに静脈内投与;イミペネム500mgを6時間ごとに静脈内投与;ドリペネム500mgを8時間ごとに静脈内投与または1時間または4時間かけて投与;アズトレオナム1gを8時間ごとに静脈内投与(アズトレオナムはセフタジジム以外のβラクタム薬にアレルギーのある患者における代替薬。セフタジジムにアレルギーがある場合はアズトレオナムにも交差反応を示すことがある。)
上記に加え以下のいずれかのうち一つを選択:
シプロフロキサシン400mgを8~12時間ごとに静脈内投与;レボフロキサシン750mgを24時間ごとに静脈内投与;ゲンタマイシンまたはトブラマイシン5~7mg/kgを24時間ごとに静脈内投与;アミカシン15~20mg/kgを24時間ごとに静脈内投与

血流感染(医療関連感染を含む)

院内肺炎と同様

尿道カテーテル関連尿路感染

以下のいずれかのうち一つを選択:
セフェピム1gを12時間ごとに静脈内投与;セフタジジム1gを8時間ごとに静脈内投与;ピペラシリン/タゾバクタム3.75gを8時間ごとに静脈内投与;メロペネム500mgを8時間ごとに静脈内投与;イミペネム500mgを8時間ごとに静脈内投与;アズトレオナム500mgを8時間ごとに静脈内投与(アズトレオナムはセフタジジム以外のβラクタム薬にアレルギーのある患者における代替薬。セフタジジムにアレルギーがある場合はアズトレオナムにも交差反応を示すことがある。);シプロフロキサシン400mgを12時間ごとに内服または静脈内投与;ゲンタマイシン5~7mg/kgを24時間ごとに静脈内投与

教訓 ポリミキシンは一度は姿を消した薬ですが、最近再び脚光を浴びています。ポリミキシンはグラム陰性菌の細胞壁外膜の構成成分であるLPSに対して作用します。セラチア、プロテウス、Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepaciaおよびフラボバクテリウムはポリミキシンに対する自然耐性を持っています。ポリミキシンには腎毒性があります。
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