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グラム陰性菌による院内感染~肺炎③ [critical care]

Hospital-Acquired Infections Due to Gram-Negative Bacteria

NEJM 2010年5月13日号より

肺炎の診断が確定したら、自院の細菌発生動向や肺炎発症までの入院期間を参考に抗菌薬を選択し、経験的先行投与を開始する。肺炎発症までの入院期間が5日以上におよぶ場合は5日未満の場合よりも耐性菌感染のリスクが高いので、広域スペクトラム抗菌薬による経験的治療を行うべきである(後段の治療の項参照)。早い段階で適切な抗菌薬投与を開始すると転帰が改善することを示す報告が続々と発表されている。したがって、適切な抗菌薬を早期に投与することが治療上の一つの要点である。しかしこの際、診断についても治療についても早々に再評価を行うことが必須である。再評価の時期は通常48~72時間後である。培養の結果が明らかになれば、大半の症例では起因菌に目標を絞り当初より狭域スペクトラムの抗菌薬に変更することができる。場合によっては、肺炎ではなく他の疾患であるという診断が確定し、抗菌薬を中止することもある。痰培の実施が不可能な状況では、その施設でもっとも可能性が高そうな起因菌を想定して抗菌薬を選択する。そして、臨床所見から効果の有無を綿密に監視しなければならない。治療開始後3日経過してもP/Fの改善が得られず発熱が続くのであれば、治療効果なしと判断すべきであることが最近の研究で示されている。

特に合併症のないVAPでは、培養の結果、経験的投与の抗菌薬が起因菌を適切にカバーしていることが確認され、薬剤感受性を参考に起因菌に的を絞った抗菌薬を選択したら、比較的短期間で抗菌薬の投与を終了すべきである。ただし、緑膿菌をはじめとするブドウ糖非発酵グラム陰性菌に感染している患者では、短期投与では再発率が高いため、適切な抗菌薬を長期間(15日)投与しなければならない。最後に、VAPにおいては予防策の実施が重要であることを強調したい。特に、包括的アプローチが注目されている(Table 3)。このような予防策の遵守によって、VAPの発生率が有意に低下することが明らかにされている。


Table 3 いろいろな院内感染の予防ガイドライン

人工呼吸器関連肺炎

正しい手洗いを実施する。
人工呼吸器使用患者に関わる医療従事者を教育し、当該施設におけるVAP発生状況、危険因子および転帰について周知する。
消毒、滅菌および人工呼吸器関連物品の取り扱いをエビデンスに基づいた方法に統一し、実践する。
口腔内消毒を定期的に行う。方法は消毒薬の添付文書に従う。
禁忌でない限り患者を半坐位に保つ。
呼吸不全のある患者では実施可能であれば非侵襲的人工呼吸を行う(注;非侵襲的人工呼吸の推奨度は、ATSガイドラインではグレードⅠだが、より新しい他のガイドラインではグレードⅢである)。
VAPの発生状況を積極的に調査・監視し、予防策を導入する。
通常の対応では感染を制御することができない施設では、声門下吸引ポートのついた気管チューブを挿管患者全員に用いる。

教訓 早い段階で適切な抗菌薬投与を開始すると転帰が改善します。抗菌薬投与を開始したら48~72時間後に再評価を行わなければなりません。治療開始後3日経過してもP/Fの改善が得られず発熱が続くのであれば、治療効果なしと判断します。抗菌薬投与期間は、大半の細菌では短期間(8日間)、ブドウ糖非発酵グラム陰性菌(緑膿菌など)では15日間です。
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