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グラム陰性菌による院内感染~肺炎② [critical care]

Hospital-Acquired Infections Due to Gram-Negative Bacteria

NEJM 2010年5月13日号より

ICUで院内肺炎が疑われると、重症化や死亡率上昇が懸念されるだけでなく、抗菌薬が不適切に使用されかねず、そのせいで細菌の耐性化が引き起こされたり、薬剤の毒性発現が増加したり、医療費が高騰したりする可能性がある。抗菌薬の適正使用を徹底するには、院内肺炎の管理方法を基本的概念のレベルから知っておく必要がある(Table 2)。

VAPの診断に必要な検査は簡便ではなく、診断を下すのは未だに難しい。臨床的診断基準に加え、治療方針の決定には微生物学的評価が重要である。VAPが疑われる患者では抗菌薬投与に先立ち、気管内採痰、BALまたはPSBによって下気道検体を採取し、鏡検および培養を行わなければならない(実施可能ないずれかの方法を選択する)。いずれの検体採取方法にも特有の欠点があるが、時宜を得て検体を採取することが最も重要である。最新の系統的レビューでは、どの採取方法を選択しても転帰には違いはないことが明らかにされている。重症度が高い場合は、診断手技を終えていなくても抗菌薬の経験的先行投与を遅滞なく開始しなければならない。

培養で検出された細菌が定着しているだけなのか感染を起こしているのかを見分けるには定量培養を行い、コロニー形成単位(CFU)を計測するか、細菌量を段階評価(少量、中等量または多量)する(半定量培養)。BALの場合は、10^4CFU/mL未満であれば定着の可能性が高い。しかし、培養結果は患者の臨床像に基づいて解釈しなければならない。定量培養の結果は、検体採取状況によりばらつきが生ずる可能性がある。また、定量培養の方が定性培養よりも、死亡率低下、ICU滞在期間短縮、人工呼吸期間短縮あるいは抗菌薬変更の必要性減少につながるというエビデンスは示されていない。だが、定着と感染を鑑別するには定量培養の方が威力を発揮するため、不必要な抗菌薬投与が行われる機会が減ると考えられる。VAP患者において、培養で分離された細菌が定着なのか感染なのかを判別する精度を一層向上させるのに有望な各種バイオマーカを、臨床所見および微生物検査に加えて利用する診断法の研究が進行中である。研究対象となっているバイオマーカは、プロカルシトニン、CRPおよび可溶性TREM-1 (soluble triggering receptor expressed myeloid cells-1)である。


Table 2 VAPの診断基準および治療ガイドライン

診断基準
胸部X線写真に新規のまたは進行する浸潤影が存在し、以下の三つの臨床徴候のうち二つ以上が認められる:体温>38℃、白血球増加または減少、膿性痰
痰培陽性
定量培養の場合は、以下の基準数以上の細菌数であること
  気管内採痰では10^6CFU/mL
  BALでは10^4CFU/mL
  PSB(protected specimen brush)では10^3CFU/mL
半定量培養の場合は、中等度以上の細菌数であること

管理手順の重点
正しく診断する。
自院の感受性データおよび肺炎発生までの入院期間を踏まえ、最も有効な抗菌薬を選択し経験的先行投与を行う。
48~72時間後に患者を再評価し、培養を再度実施する。感受性の結果に従い使用する抗菌薬を調整する。
大半の細菌では、抗菌薬投与は短期間(8日間)でよい。ただし、ブドウ糖非発酵グラム陰性菌(緑膿菌など)では15日間の抗菌薬投与が推奨されている。
VAP予防プログラムを導入する。

教訓 気管内採痰、BALおよびPSBのいずれの検体採取方法にも特有の欠点があります。タイミング良く検体を採取することが最も重要です。どの採取方法を選択しても転帰には違いはないことが明らかにされています。
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