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グラム陰性菌による院内感染~肺炎① [critical care]

Hospital-Acquired Infections Due to Gram-Negative Bacteria

NEJM 2010年5月13日号より

肺炎

重篤な院内感染のうち、もっとも頻度が高いのが院内肺炎である。その大半は、人工呼吸器使用患者に発生する。人工呼吸器を48時間以上使用している患者の約10~20%に人工呼吸器関連肺炎(VAP)が発生する。VAPは、入院期間の延長、死亡率上昇および医療費増大につながる。グラム陰性菌は院内肺炎の起因菌の最も多くを占める。特に、緑膿菌、A. baumanniiおよび腸内細菌科細菌が多い。米国のICUにおいて1986年から2003年のあいだに肺炎の起因菌として有意に増加したグラム陰性菌は、アシネトバクター属の細菌だけであった。困ったことに、以上のグラム陰性菌の薬剤耐性、特にカルバペネム耐性は、治療上の重大な制約となっている。最近の調査では、VAP症例から分離された緑膿菌679株のうち26.4%、同じくA. baumannii 427株のうち36.8%がカルバペネム(イミペネムまたはメロペネム)耐性であるという結果が得られている。世界中の他の国々からも同じようなデータが報告されている。例えば、ギリシャではICUで分離された細菌のうち最大85%がカルバペネム耐性を示す。現在使用できるあらゆる抗菌薬(ポリミキシンを含む)に耐性を持つ微生物による感染例も報告されており、ただならぬ危惧が広がっている。

我々医師が留意しなければならない新しい臨床概念として医療関連肺炎がある。これは、医療または長期療養施設との直接的または間接的接点を持ったことのある患者に市中肺炎が発生し入院に至った場合を指す。単なる市中肺炎の患者と比べ、医療関連肺炎の患者には基礎疾患があることが多く、無効な抗菌薬の経験的先行投与が行われている頻度が高く、死亡の危険性も大きい。したがって、医療関連肺炎の危険因子がはっきりしている患者や、肺炎で救急外来を受診する患者に対しては、幅広い菌種に有効な抗菌薬治療の実施を考慮すべきである(Table 1)。具体的には、多剤耐性グラム陰性菌および耐性黄色ブドウ球菌を念頭に置かなければならない。広域スペクトラム抗菌薬の不必要な使用を避けるには、耐性菌感染の危険因子の一つ一つについて実際の予測精度を検証する必要があり、そのためにはさらに研究を重ねなければならない。最近の入院歴または抗菌薬使用歴や、長期療養施設に入所中などは、重大な危険因子と考えるべきである。


Table 1 医療関連感染症および耐性菌感染の危険因子

医療関連感染症の危険因子
先行する90日間に2日以上の入院歴がある
老人保健施設や長期療養施設に居住
在宅輸液療法(抗菌薬の投与を含む)
維持透析
在宅創傷管理
家族に多剤耐性菌感染または定着している者がいる

耐性菌感染の危険因子
先行する90日間に抗菌薬使用歴がある
入院期間が5日以上
地域または病棟内における耐性菌発生頻度が高い
免疫抑制状態

教訓 VAP症例から分離された緑膿菌679株のうち26.4%、同じくA. baumannii 427株のうち36.8%がカルバペネム(イミペネムまたはメロペネム)耐性であるという調査結果があります。現在使用できるあらゆる抗菌薬(ポリミキシンを含む)に耐性を持つ微生物による感染例も報告されています。
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