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ALI&集中治療2009年の話題④ [critical care]

Update on Acute Lung Injury and Critical Care Medicine 2009

Am J Respir Crit Care Med 2010年5月15日号より

臨床研究

ALIおよびその他重症疾患の治療において特に留意すべきことの一つは、抗菌薬療法をスマートかつ計画的に実施することである。このテーマについての展望を示す優れた論文では、抗菌薬療法の全体的な舵取りには、多面的な取り組みを行い抗菌薬の使用法を改善することによって、耐性菌の発生を防ぎ、臨床転帰を改善させ、費用の増大を抑えるという目標を達成する必要があることが示された。この多面的な取り組みに関連する最近の成果として、臨床上の意思決定補助システム、バイオマーカを基にした治療法決定手順および抗菌薬療法を構成する諸要素についての知識の深化が挙げられる。しかし、この分野は研究を重ねる余地がまだまだ大幅にある。

分野別ICUと総合ICUのどちらが優れているかという問題についての遡及的コホート研究が行われ、2002年から2005年までのあいだに124ヶ所のICUに入室した患者の解析が実施された。主要な交絡因子を調整し、総合ICUと当該疾患を対象とする分野別ICUとを比較したところ、肺炎を除くすべての病態のリスク調整後死亡率の有意差は認められなかった。当該疾患に適した分野別ICUに収容されなかった場合のリスク調整後死亡率は、総合ICUに収容された場合よりも高かった。この論文の著者らは、ICUの専門分化を推進すべく投資を行っても、死亡率の改善は見込むことができないであろうという見解を示している。国によって集中治療の利用パターンが大きく異なると考えられている。終末期の入院における病院医療および集中治療の利用状況の評価を目的とした研究が、イングランドおよび米国で先頃行われた。米国では全ての病院内死亡症例のうち50%において集中治療が行われていたが、英国ではわずか10%に過ぎなかった。イングランドでは、終末期の入院における集中治療の実施制限は高齢患者および内科系患者において最も顕著に認められた。重症患者の譫妄は、従来考えられてきたよりも頻度が高く重要な問題であるという認識が最近になって広まっている。60歳以上のICU入室患者連続340症例を対象とした前向きコホート研究が行われ、高齢者ではICU入室期間中の譫妄発生日数が多いほど、入室後1年以内の重症度調整死亡率が高いことが明らかになった。

ALIの診断および治療に威力を発揮する可能性のある、新しい画像診断法や核医学検査が開発されている。ALIの発症には好中球による炎症が深く関与している。ALI患者の細胞代謝を18F-2-deoxy-2-fluoro-D-glucoseを用いたPET検査で画像化して評価する研究が行われた。この研究の目的は、ALI患者の肺における炎症性代謝活性の程度と局在を明らかにすることである。炎症性代謝活性(主に好中球によって生ずるものと考えられる)の強い部分は、含気が少ない部分に局在するわけではなかった。肺全体において、炎症性代謝活性の著しい上昇が認められた。したがって、ALIでは胸部X線写真や胸部CTにおける肺の虚脱やconsolidationの程度は、その部分の炎症の程度を反映しているわけではないと考えられる。

ARDSネットワークが行ったFluid and Catheter Treatment Trial(FACTT)で肺動脈カテーテル群に割り当てられたALI/ARDS患者500名について、循環動態が不良であることを示す理学的所見と、PACなしで得られる客観的パラメータ(24時間の総水分喪失量、ScvO2および中心静脈圧)はCIおよびSvO2低値と相関する、という仮説が検証された。循環動態不良を示す理学的所見として用いられたのは、毛細血管再充満時間の延長(>2秒)、膝のまだら模様および皮膚温低下である。これらの理学的所見は、心係数および混合静脈血酸素飽和度低下の予測には、感度も特異度も低く役に立たないことが分かった。ScvO2はSvO2と有意に相関することが明らかになったが、信頼区間が広いので、この相関の臨床的有用性は不明である。

H1N1インフルエンザの世界的大流行に関連し、妊婦や70歳以上の高齢者および免疫不全疾患などの患者において重症ALIや死亡のリスクが高いことに重大な懸念が持たれた。

教訓 、ALIでは胸部X線写真や胸部CTにおける肺の虚脱やconsolidationの程度は、その部分の炎症の程度を反映しているわけではないようです。
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