SSブログ

集中治療文献レビュー2010年4月① [critical care]

Anesthesia Literature Review Critical Care Medicine

Anesthesiology 2010年4月号より

Intravenous Drug Administration During Out-of-Hospital Cardiac Arrest
JAMA. 2009;302(20):2222-2229.

エピネフリンはACLSに必須の薬剤として広く使用されている。だが、心肺蘇生におけるエピネフリン使用の有効性を裏付ける臨床データは不足している。最近の諸研究では、エピネフリン投与が転帰の悪化につながる可能性があることを示す結果が報告されている。

ACLSプロトコルから薬剤の経静脈投与を除外した場合に、病院外心停止症例の生存退院率が改善するかどうかを検証するため、前向き無作為化比較対照試験を行った。外傷以外の原因による成人病院外心停止で救急隊が治療にあたった症例を連続的に対象とした(経静脈薬剤投与を行うACLS群418名、経静脈薬剤投与を行わないACLS群433名)。

短期生存率は、経静脈薬剤投与を行うACLS群の方が経静脈薬剤投与を行わないACLS群よりも高かった(P=0.004)。しかし、生存退院率(10.5% vs 9.2%; P=0.61)、良好な神経学的転帰を呈する生存者の割合(9.8% vs 8.1%; P=0.45)および一年後生存率(10% vs 8%; P=0.53)については有意差は認められなかった。心肺蘇生の質については両群間に差はなかった。心室細動、心肺停止から救急隊到着までの時間および目撃者がいるか公共の場での心停止といった要素についての調整を行ったところ、経静脈薬剤投与を行うACLSと経静脈薬剤投与を行わないACLSのあいだに、生存退院率の有意差は認められなかった。

解説
病院外心停止症例において、エピネフリンをはじめとする経静脈薬剤を使用しても長期的転帰は改善しないことが明らかにされた。ただし、この研究を解釈するに当たっては、薬剤非投与群の生存率が過大評価されていることに注意を払う必要がある。とは言え、ここに示されたデータは、院外心停止後の長期転帰には経静脈薬剤以外の要因が関与していることを示唆している。

Prolonged mechanical ventilation after cardiac surgery: Outcome and predictors
J Thorac Cardiovasc Surg 2009;138:948-953

心臓手術後の人工呼吸期間が長期におよぶと、院内死亡率は40%にものぼり、医療制度全体に対しても大きな経済的負担がのしかかることになる。しかし、人工呼吸期間長期化の可能性を予測することは困難である。この前向き観測研究では、手術3日後に人工呼吸が行われている患者を連続的に登録し、術前・術中・術後のデータが記録された。

心臓手術後第3日に生存していた2620名のうち、163名に人工呼吸が行われていた。術後第10日までに、このうち50名(31%)が人工呼吸器離脱に成功し、78名(48%)には依然人工呼吸が行われ、35名(21%)は死亡した。術後第3日までの人工呼吸器離脱成功に関連する要因は、尿量500mL/day以上、GCS15点(満点)、動脈血炭酸水素イオン濃度20mM以上、血小板数10万/μL以上、エピネフリンまたはノルエピネフリン不使用および肺傷害なしであった。この研究で得られたデータは、スコアリングシステムの開発に用いられた。このスコアリングシステムを用いれば、迅速な人工呼吸器離脱が可能な患者を同定し、抜管できる患者に余計な医学的介入を行うのを防ぐことができる可能性がある。

人工呼吸器離脱成功のオッズ比
尿量500mL/day以上   16.47
GCS15点(満点)     9.75
動脈血炭酸水素イオン濃度20mM以上 6.09
血小板数10万/μL以上  3.18
エピネフリンまたはノルエピネフリン不使用  2.84
肺傷害なし    2.40

解説
ここに示されたデータは、心臓手術後に人工呼吸器離脱が成功する可能性の高い患者に気管切開のような侵襲的手技を行ってしまうことの歯止めになるだろう。この研究で作成されたスコアリングシステムの外的妥当性を検討するには、心臓手術後患者の管理を行っている他のICUでこのスコアを使用した場合の有効性の前向き評価を行う必要がある。

コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。